◉日本の富裕層がラグジュアリーブランドに求めるもの、欧州との違い

一方、日本の富裕層は情緒的な価値を重要視する傾向にあり、ブランド品自体は「単なる物」として捉える傾向にあります。日本の富裕層社会は発展途上で、日本の富裕層のコミュニケーション力や芸術に関する感性を育む環境が海外と比べて未熟です。
せっかくブランド品を持っていても、それを身につけて出席する場に恵まれていません。このことが、欧州の裕福層と日本の裕福層で異なった価値観を生んでいる原因だと考えられます。

なお。参考までに、戦後の日本のラグジュアリービジネスの歴史について、図にまとめました。

◉ラグジュアリービジネスの魅力と今後の可能性

ラグジュアリービジネスの魅力は大きく分けて2つあります。

まず、ラグジュアリービジネスは永遠のビジネスであるということです。
どの時代、どのコミュニティでも、例え政治経済の形態が異なっていようとも、なにかしらの階層は存在し、お金持ちも存在します。また、例え景気が悪くても、お金持ちは物を買いたいという衝動を抑えきれずブランドを買ってしまうので、ラグジュアリーブランドの売上の回復も早いといいます。
つまり、いかなる場合でも、お金持ちを対象にするラグジュアリービジネスは需要があります。これは永遠のビジネスと言えるでしょう。

また、もう1つは、心を豊かにするビジネスであるということです。それは前述した購入者の情緒的な豊かさだけでなく、販売側である社員の心も豊かにします。
ご存知のとおり、ラグジュアリーブランドの多くはヨーロッパ発祥のものです。ヨーロッパから見れば日本は極東であり、社員達がブランドを正しく理解できるかどうかが問題になりました。
そこで例えばブルガリでは、まずトップの教育からということで、本国で一流の待遇を受けたそうです。また、社員研修の環境づくりとして一流のホテルの部屋をとることで社員全体の意識を合わせ、ファミリーの一員であるという意識、ブルガリマインドを持たせることを徹底しました。

ラグジュアリービジネスは付加価値のビジネスとも形容されるように、人の欲求に見合う内容で、且つその価格に見合った価値が求められるビジネスです。

そのため、優位性、差異性、利便性、感受性がキーポイントとなります。よって、1→10よりも寧ろ0→1が求められます。キラーアイテムを構築し、定着させることや、アフターサービスを徹底するなど、施策をどれだけ行い発展させることができるかが、今後のラグジュアリービジネス発展の鍵となるのかもしれません。

BY M.K

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