支援の質や手数料、契約説明などの課題に対応

中小企業庁は「中小M&Aガイドライン」を改訂し、9月22日に公表した。中小M&Aの市場拡大やM&A支援機関の増加といった取引環境の変化を踏まえ、契約の分かりにくさや担当者による支援の質のばらつき、手数料体系の分かりにくさなどの課題に対応した。ガイドラインの改訂が、中小M&A市場のさらなる活性化に結び付くかが注目される。

初版の「中小M&Aガイドライン」はM&Aに対する中小企業経営者の理解を促す「事業引継ぎガイドライン」(2015年3月)を全面改訂し、2020年3月に策定された。第三者に会社を譲り渡すことを躊躇する経営者も多かった中、後継者不在の中小企業や中小M&Aをサポートする各支援機関の手引き・行動指針を示し、適切なM&A支援を判別しやすくした。

その後、中小M&Aの裾野は着実に広がった半面、仲介・フィナンシャルプランナー(FA)の契約内容や手数料体系の分かりにくさや、譲り渡し側・譲り受け側のマッチングを含めた支援の質のばらつきといった課題が顕在化。今回の改訂では特にM&A専門業者向けの基本事項の拡充とともに、依頼者がM&Aの相手方となる候補先との直接交渉制限に関する条項の留意点について改訂した。

・近年の主なM&Aに関する指針(ガイドライン)・報告書

年月 指針(ガイドライン)・報告書名
2005年5月 「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」
2006年6月 「事業承継ガイドライン」
2007年9月 「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」
2008年6月 「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」
2015年3月 「事業引継ぎガイドライン」
2016年12月 「事業承継ガイドライン」改訂
2019年6月 「公正なM&Aの在り方に関する指針」
2020年3月 「中小M&Aガイドライン」
2020年7月 「事業再編実務指針」
2022年3月 「事業承継ガイドライン」二次改訂
2023年4月 「対日M&A活用に関する事例集」
2023年8月 「企業買収における行動指針」
2023年9月 「中小M&Aガイドライン」改訂

公表資料を基にM&A Online作成

改訂版では、依頼者が負担する手数料を適切に把握することの難しさを指摘。実務上で多用される算定方式(レーマン方式※1)における「基準となる価額」の考え方はさまざまなため、手数料の考え方や報酬の目安を確認しておく必要性を説いた。また最低手数料を設定する仲介者・FAも多いため、参考資料として最低手数料の分布状況や適用事例を紹介した。

※1 M&A業界で一般的な報酬体系。基準となる価額をあらかじめ定めた段階的な料率テーブルで計算する仕組みだが、基準となる価額は「譲渡額(株式価額等の譲渡額)」、「移動総資産額(譲渡額+負債)」、「純資産額(資産ー負債)」など、さまざまなケースがある。