次代を担う成長企業の経営者は、ピンチとチャンスが混在する大変化時代のどこにビジネスチャンスを見出し、どのように立ち向かってきたのか。本特集ではZUU online総編集長・冨田和成が成長企業経営者と対談を行い、その経営戦略に迫る。今回はサインポスト株式会社の蒲原代表にお話を伺った。
1965年生まれ。大阪府出身。
1988年、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。最先端の技術を駆使した次期システムの構築や、三菱東京UFJ銀行の合併に伴うシステム統合などの大型プロジェクトを手掛ける。2007年にサインポスト株式会社を設立し、代表取締役に就任。2011年には、大規模金融システムの開発現場を描いたフィクション小説『プロジェクトマネージャー』(ダイヤモンド社)を上梓。
強みとする課題解決能力や、オープンイノベーション、銀行との信頼関係などを強みに、「地方を元気にする」ビジョンを共有する多数の企業と連携し、生産性向上・業務支援のためのプラットフォームを構築し全国に展開。
これまでの事業変遷について
冨田:初めに、貴社の設立目的と事業の変遷について教えてください。
サインポスト株式会社 代表取締役社長・蒲原 寧氏(以下、社名・氏名略): 私が当社を創業した背景には、「孫の代まで、豊かな日本を築く一翼を担う」という想いがありました。この想いを経済界から実現するために、まだ世の中にない付加価値をもたらすべく、当社を設立し事業を展開してきました。
私自身が三菱UFJ銀行出身ということもあり、創業当初は前職の経験を活かして、新設された銀行のシステム開発やコンサルティングを中心に事業を展開していました。当社では創業当時から「ランチェスターの法則」という考え方を大切にしています。ご存知だとは思いますが、「ランチェスターの法則」とは「戦力は兵力の2乗に比例する」というものです。例えば、当社の兵力が2で競合他社の兵力が10ある場合、戦力はそれぞれ2の2乗の4と10の2乗の100で、その差は96にもなります。ベンチャー企業の当社は、戦力では大企業に到底太刀打ちができませんので、大企業と競争するのではなく、大企業が来ないような特定のニッチ市場や手間のかかるプロジェクトに進出する必要がありました。
この考え方を基に、ニッチな分野の地道な業務でもお客様の課題解決に徹底的に向き合って事業を展開しています。具体的には、「お客様の一員」として業務を行うため、場合によっては社員を出向させるなど実際の業務に密着した支援を提供しています。また、プロジェクトマネジメント全般も行い、スケジュール、トラブル管理、リソース管理などを通じてお客様の課題解決に貢献しています。
加えて、直近では商業銀行にとどまらず、カード、アセットマネジメント、信託銀行、保険、証券など、金融機関の企業様や、国や地方公共団体に対してもサービスを提供しています。国や地方公共団体に対しては、システム全体を担当するCIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)補佐官の役割を果たすコンサルティング業務をベースに、多岐にわたる事業を展開しています。
経営判断をする上で最も重視していること
冨田:これまで経営をされてきた中で、蒲原社長が大切にされてきた判断基準についても教えてください。
蒲原:当社では次の2つを「社会からの通信簿」と定め、当社の事業活動が世の中の役にたっているかの判断の指標としています。 1つは「お客様からの感謝の言葉」です。お客様からいただいた感謝の言葉の数を創業以来カウントし、それをもとに人事考課も行っています。もう1つは「営業利益」です。 私は営業利益が世の中を良くした証だと考えており、経営の指標の中でも特に重視しています。
思い描いている未来構想
冨田:過去から現在までのお話の中で、貴社のポテンシャルがとても伝わってきました。次に、今後の方向性についても教えてください。
蒲原:2030年までに日本を代表する会社になりたいと考えています。そのためにも、まずは既存事業の拡大と、金融機関や地方創生に向けたDX支援事業に注力していきます。特に後者に関しては、当社の技術力を駆使することと他社とのオープンイノベーションにより、新たな付加価値を生み出していきたいと考えています。
加えて、グローバル展開も見据えた新規事業の開発にも取り組んでいきます。現在、私自身の経験を元に新規事業のエッセンスを詰め込んだ「新規事業レシピ」を作成中です。新規事業開発の成功確率は一般的にかなり低いものですが、少しでも成功の確率を上げ、また失敗した場合のダメージを抑えることは可能です。「新規事業レシピ」を作成することで、今後当社で取り組む新規事業の成功率を高めていきたいと考えています。
冨田:蒲原社長の「新規事業レシピ」はぜひ拝見したいですね。昨今だと「リテールテック」という言葉もありますが、貴社は開発から実行、そして保守運用まで一貫して強みを持っていらっしゃると感じます。
蒲原:おっしゃるとおり、その部分は当社の強みで、お客様にもご支持をいただいています。当社の場合、プロダクトを作るだけではなく、作ったプロダクトを現場でどう活用すべきかを提案し、その取り組みによる効果測定まで全て実施しています。そういったことの積み重ねでお客様の信頼を獲得し、「お客様の一員として、社会に感謝される仕事をする」という経営理念を体現しています。
冨田:まさに経営理念を完全に具現化したサービス提供の形ですね。
ZUU onlineユーザーならびにその他投資家へ一言 など
冨田:最後に、ZUU onlineユーザーに一言お願いします。
蒲原:社会的にもDXは追い風ですので、金融機関や公共機関に対するコンサルティング事業はこれからも着実に伸ばしていきます。 加えて、「リテールテック」の領域には大きなマーケットがあります。他社様のプロダクトやサービスと連携することも含めて、日本、そして世界に展開していきたいと考えています。これからもご支援をよろしくお願いします。
冨田:本日は貴重なお話をありがとうございました。
- 氏名
- 蒲原 寧(かんばら やすし)
- 会社名
- サインポスト株式会社
- 役職
- 代表取締役社長