この記事は2024年6月14日にSBI証券で公開された「6月権利確定!高配当・好業績期待銘柄12選」を一部編集し、転載したものです。
目次
6月権利確定!高配当・好業績期待銘柄12選
6月半ば時点での日経平均株価は、5月から続く38,000円~39,000円のボックス圏での値動きを維持しています。米テック株の上昇に半導体・半導体関連株が連れ高した反面、6/14(金)まで開催の日銀金融政策決定会合への警戒感から、銀行株などのバリュー株に利益確定売りが目立つ状態です。
同期間の米国株式市場は、6/13(木)にS&P500とナスダックが最高値を更新するなど活況を呈しています。米株式市場の好調さの大きな要因の一つに、インフレ指標の伸び鈍化による債券利回りの低下が挙げられます。FRBが重要視する指標、5月消費者物価のコア指数(前年同月比)は約3年ぶりの低い伸びでした。同指標の発表を受け、米10年債利回り(長期金利)は、6/12(水)に4.25%と4月以来の低水準まで沈む場面もありました。また、1対10の株式分割を実施したエヌビディアや、生成AIを端末に搭載する取り組みを発表したアップルなど大型テック株の上昇が寄与した部分も大きくなっています。
そのような中、東京株式市場では、1-3月期の決算発表を終え、アナリストによる業績・株価の修正等があらかた一巡しました。同決算発表シーズンでは、成長性が見直された銘柄もある一方で、配当政策を含め、株主還元施策の拡大が好感された銘柄が多かった印象です。そこで本稿では、今後の業績成長にも期待感が持て、かつ6月に配当の権利が確定する高配当銘柄を抽出してみました。
スクリーニング条件は以下の通りです。
① 時価総額が500億円以上 (金融業を除く)
② 年間の会社予想配当利回りが3%以上(6/11時点)
③ 6月末に配当の権利が確定
④ アナリスト予想数が2つ以上
⑤ 予想EPS4週変化が>0
⑥ 来期市場純利益が増益
⑦ 取引所または日証金による信用規制・注意喚起銘柄を除く
図表の銘柄は、①~⑦を全て満たし、②の予想配当利回りが高い順に掲載しています。
6月末に配当の権利が確定する企業は、6月決算銘柄及び12月決算銘柄が該当します。特に12月決算とする企業数は東証プライム市場全体の13%にあたり、3月決算銘柄(69%)の次に多いです。配当獲得のために3月決算銘柄を保有している方にとって、受け取れるタイミングが異なる銘柄を持つことで、配当金を受け取る楽しみが増える点という点もポイントです。
なお、東証プライム市場の予想配当利回りは2.3%(6/13時点)です。予想配当利回りが3%以上の条件を満たすことで、「高配当」であるとの評価が可能です。
掲載銘柄を解説!
ピジョン(7956)
育児用品大手。哺乳瓶では内外でトップシェアを有しています。営業利益(23.12期・調整前)の65%は中国事業からによるもので、他は日本15%、シンガポール9%、欧米(ランシノ事業)11%となっています。5/14(火)に発表された24.12期1Q決算は売上高237億円(前年同期比0.6%増)、営業利益26億円(同21%減)と増収減益。中国、シンガポール事業が減益となりました。通期では売上高1,010億円(前期比6%増)、営業利益114億円(同6%増)が会社計画です。中国は処理水問題が響きましたが回復傾向のようで、売上高は想定通りだったようです。24.6末38円、24.12末38円、年間76円の1株配当を計画しています。
JT(2914)
たばこ(23.12期調整後営業利益構成比97%)を中心に、医薬、食品加工にも展開しています。グローバルに事業を展開しており、同利益の地域別構成比(23.12期)はアジア33%、西欧31%、EMA(アフリカ、中近東、ロシア含む東欧、トルコ、南北アメリカ他)36%です。EMAのうちロシアの比率が高く、全社調整後営業利益に対し24%を占めています。
利益配分政策として「配当性向75%」を目安にしています。24.12期は24.6末97円、24.12末97円、年間194円の1株配当を計画しています。24.12期1Qは売上高7,403億円(前年同期比11%増)、営業利益2,158億円(同4%増)と増収増益でした。通期では調整後営業利益(為替一定ベース)微減が会社計画です。
フルキャスト(4848)
中核ビジネスである「短期業務支援事業」では、顧客企業の業務量の増減に合わせ、タイムリーに短期系人材サービスを提供しており、営業利益(23.12期)の94%を占めています。全国で834万人の登録スタッフを有し、マッチング実績は年間680万件(2023年末集計)に達します。総還元性向50%を目安とし、ROE20%以上の継続を目指します。24.12期は24.6末31円、24.12末31円、年間62円の1株配当を計画しています。24.12期1Qの営業利益は23億円(前年同期比1.1%減)で、通期会社計画営業利益は72億円(前期比17%減)となっています。
ローランド(7944)
電子ピアノ、ドラム、シンセサイザー、ギターなど電子楽器の開発、製造、販売を行っている会社です。1972年の設立以来、世界に先駆けて多くの製品や技術を生み出してきました。23.12期は売上・利益とも増加し、過去最高益を更新するなど成長が続いています。原則、連結還元性向50%を目指す方針で、成長投資資金の留保が必要な場合でも、同30%は確保したいとしています。24.12期は24.6末85円、24.12末85円、年間170円の1株配当を計画しています。24.12期見通しが減収減益だったこともあり、決算発表した2月以降株価は冴えない展開です。5/9(木)に発表の24.12期1Q決算では営業利益が前年同期比22.5%減ですが、上半期計画も同減益率です。
TOYO TIRE(5105)、住友ゴム(5110)
タイヤ業界では、全社売上高でみて国内首位(世界第2位)のブリヂストン(別記)に続き、住友ゴムが第2位、TOYO TIRE(5105)が第4位となっています。ただ、予想配当利回りではTOYO TIREがもっとも高く、住友ゴムがそれに続く形です。24.12期営業利益見通しについては、前者が微増益予想、後者が5.4%減益予想です。また、1Q営業利益はともに大幅増益でスタートしています。
住友ゴムでは24.12期は24.6末29円、24.12末29円、年間58円の1株配当を計画しています。TOYO TIREは連結配当性向30%以上をメドと考えています。24.12期は24.6末50円、24.12末55円、年間105円の1株配当を計画しています。
ヤマハ発動機 (7272)
二輪車などを扱うランドモビリティ事業(売上高構成比65%)をメインに、水上オートバイなどのマリン事業(同23%)やロボティクス事業(同5%)などを展開。世界180以上の国や地域で製品を製造・販売を行い、海外売上高比率は94%に上ります(23.12期)。
今期1Q(24.1‐3月期)時点の業績は、売上高6,420億円(前年同期比5.9%増)、営業利益779億円(同2.7%増)と増収増益を達成。円安や利益率の高いプレミアムモデルの二輪車の出荷増などが追い風となりました。プレミアムモデルの引き合いは強く、販促費をかけずとも売り上げがあがったと言及しています。総還元性向について3年間(22-24年度)累計40%という目標に基づき、24.12期は4期連続となる増配が実施される予定です。
※24.12期からIFRSに移行。また、6/6に「型式指定」の不正問題を巡り、国交省による立ち入り検査が実施されました。
キリンホールディングス (2503)
大手飲料メーカー。祖業である中国の伝説上の生き物「麒麟」が描かれたビールが有名です。現在の事業領域は、国内ビール・スピリッツ事業(売上高構成比32%)、アルコール以外を扱う国内飲料事業(同12%)、北米・豪州でのクラフトビールを中心としたプレミアム戦略の推進を行うオセアニア酒類事業(13%)、ビール事業で培った微生物や細胞の知見を活かした医薬事業(20%)他と多岐にわたります(23.12期)。中でも、医薬事業が全体の事業利益の37%を占め、利益率が高いのが特徴です。6/14(金)には健康食品大手ファンケルを2,100億円で買収すると報じられました。
23.12期は価格改定効果等により過去最高の事業利益を達成。会社側は今期1Q(24.1-3期)時点の業績について、価格改定やコストコントロール等により、売上高及び事業利益は計画を上回って推移したと述べています。株主への適切な利益還元を最重要課題の1つに掲げ、1907年の創立以来配当を欠かさず実施。配当性向の目安は40%以上です。
ブリヂストン (5108)
世界的大手のタイヤメーカー。地域ごと売上高比率は米州51%、欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ22%、日本14%、中国・アジア・太平洋13%です(23.12期)。用途別では、乗用車/ライト用が売上高の55%、トラック・バス用が24%他(同)。また、製造・販売以外にも、メンテナンスなどのサービスやITツールの導入等を行うソリューション事業等も展開しています。
プレミアム領域へのフォーカスと、ビジネスコストダウンなどを今後の成長戦略の一つとして掲げています。今期1Q(24.1-3期)時点での業績は、増収・営業増益※を確保。ハイパーインフレが発生したアルゼンチンを中心に、南米での減益が響きましたが、円安が寄与した格好です。また、配当性向の目安40%程度と、継続的な配当の増額が、株主還元の基本方針です。今期(24.12期)も4期連続での増配実施を予定しており、26.12期には最低でも1株あたり250円となる計画です【ご参考:23.12期実績は:200円】。
※調整後営業利益。同社は従来日本基準で公表していた営業利益に代わり、「調整後営業利益」を採用している。
マブチモーター (6592)
小型直流モーター大手。特に、主力の自動車電装機器用モーター(売上高構成比78%)事業では世界トップシェアの製品を複数有しています(23.12期)。1964年に香港へ進出。これ皮切りに、積極的に海外展開を行い、現在では製品の海外生産比率は100%、海外販売比率も90%超に上ります。
今期1Q(24.1-3月期)時点の業績は、販売実績が期初計画を下振れたものの、円安や売価改善等により、営業利益は38億円(前年同月比114%増)と大幅増益を達成。また、長期的な業績目標としては2030年に、売上高3,000億円(23.12期実績1,786億円)、営業利益率15%以上(同8.7%)を掲げています。
配当政策では、株主資本配当率(DOE)3.0%~4.0%を目安としており、長期的な安定配当の実現を基本方針として掲げています。
東京建物 (8804)
1896年設立、日本で最も歴史のある旧安田系の総合不動産会社です。「東京スクエアガーデン」や「中野セントラルパーク」、マンションの「Brillia」シリーズなどを手掛けています。売上高構成比は、オフィススビルや商業施設等の開発・販売・賃貸・運営などを行うビル事業が41%、マンション等の開発・分譲・販売・賃貸などを行う住宅事業が36%、不動産の売買・仲介などを行うアセットサービスが17%他です(23.12期)。
今期1Q(24.1-3月期)時点では、投資向け物件売却による売上が減少した影響で、減収減益でした。ただ、今期(24.12期)通期計画では、分譲マンションの売上・粗利益の増加等により、前期比で増収増益となる見通しです。
連結配当性向の目安は30%。利益成長に伴い、今期(24.12期)は11期連続となる増配が実施予定です。
住友重機械工業 (6302)
総合機械メーカー。現在では、重機以外にも半導体製造装置や医療装置の分野にも進出しています。売上高構成比は、メカトロニクスが20%、プラスチック加工機械などのインダストリアルマシナリーが26%、油圧ショベルが含まれるロジステック&コンストラクションが36%、エネルギー&ライフラインが17%他です。
今期(24.12期)は、当初計画から、大型の開発投資等により営業減益となる見通しです。1Q(24.1‐3月期)時点の業績は、連結全体で受注が約1割ほど未達となりましたが、営業利益に関しては約2割程好転したと会社側は述べています。
今期(24.12期)から26.12期までの中計では、安定配当と自社株買いの実施で800億円規模の還元を行うことを資本政策として掲げています。早速、2月には100億円を上限とする自社株買いの実施を発表しました。また、指標の目安としては総還元性向は40%以上、DOE3.5%以上で、下限配当は1株あたり125円としています。
▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。