この記事は2024年5月10日にSBI証券で公開された「株価上昇に期待!?好業績発表のプライム銘柄」を一部編集し、転載したものです。
目次
株価上昇に期待!? 好業績発表のプライム銘柄
東京株式市場は上値の重い展開になっています。日経平均株価は4/19(金)の取引時間中に付けた36,773円を安値に5/7(火)には一時38,863円まで戻しましたが、5/8(水)・5/9(木)と続落しました。テクニカル的には25日移動平均線が上値抵抗ラインとなり、それに跳ね返される形で、短期的な「弱気相場」から脱し切れていない状態です。
「弱気相場」が続いている背景には、現在佳境を迎えている決算発表で、企業により明暗が分かれる状態が続いていることが一因であると考えられます。この時期は、決算発表で公表された利益等の実績数字、予想数字が市場コンセンサスを上回るか下回るかがポイントです。今回の決算発表では、市場コンセンサスを下回り、株価が下がる銘柄も少なくなく、盛り上がりに欠ける状況になっています。
象徴的であったのはトヨタ(7203)の決算発表であったと考えられます。同社の決算については、24年3月期の営業利益が日本企業で初の5兆円台に乗せたことを前向きに捉える向きもありましたが、25年3月期の会社予想営業利益は減益の見通しで、市場予想を1兆円超下回りました。成長投資や自社株買いが株価を支える面もありますが、減益予想を嫌気する売り圧力も強いようです。
もっとも、利益等の実績数字、予想数字が市場コンセンサスを下回る企業が多い分、逆に市場予想を上回る決算を発表した企業は「希少価値」を有することになり、決算発表後も投資家に選好される可能性もあるように思われます。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、東証プライム市場の3月決算銘柄を対象に、利益面で会社予想および市場予想を上回り、当面増益も期待できる銘柄を抽出すべく以下のスクリーニングを行ってみました。
(1)東証プライム市場上場銘柄
(2)時価総額が1,000億円以上
(3)3月決算銘柄
(4)5/8(水)までに決算発表を終了
(5)24.3期営業利益が市場予想(4/19時点・Bloombergコンセンサス)を上回っている
(6)25.3期会社予想営業利益が前期比5%超の増益予想で、かつ市場予想(4/19時点)を上回っている
(7)26.3期市場予想営業利益が、25.3期市場予想営業利益(5/8時点)に対し10%超の営業増益予想
(8)取引所または日証金による信用規制・注意喚起銘柄を除く
図表の銘柄は上記(1)~(8)のすべてを満たしています。掲載は26.3期市場予想営業増益率の高い順となっています。
一部掲載銘柄を解説!
日立製作所(6501)~事業構造改革を継続しつつ、日本の技術革新をリード
■技術革新のリーディングカンパニー的存在
日本を代表する巨大企業グループで、技術革新のリーディングカンパニー的存在です。おもな事業(コア事業)は以下の通りです。(カッコ内は24.3期売上構成比、利益構成比※)
(1)デジタルシステム&サービス(25%、37%)
システムインテグレーション、クラウドサービス、ITプロダクツ他
(2)グリーンエナジー&モビリティ(29%、22%)
エネルギーソリューション、鉄道システム
(3)コネクティブインダストリー(30%、35%)
ビルシステム、計測分析システム(日立ハイテク)
インダストリアル・プロダクツ、水・環境
※ここでの「利益」は、「Adjusted EBITDA」で、調整後営業利益に無形資産等償却費、持ち分法投資損益を足した数値になります。
また、全部門横断的に展開し、社会やビジネスが生み出すデータから新しい価値を創造し、イノベーションを加速するエンジンとして「LUMADA事業」(AIツール等を含む)を展開しています。
日立はこれまで、継続的に事業構造改革を行ってきました。10.3期には上場子会社22社を抱えるグループでしたが、上記3事業の「コア事業」に経営資源を集中すべく、非コア事業の売却等を行ってきました。その結果、上場子会社はなくなり、「コア事業」の売上構成比は10.3期53%から向上。その間、収益力も着実にアップしてきました。
■25.3期も増益を予想~自社株買い、株式分割も
4/26(金)に24.3期決算を発表。売上高9.72兆円(前期比11%減)、調整後営業利益※7,558億円(同1%増)と減収増益となりました。
日立建機および日立金属が事業再編で子会社でなくなったことから減収になりましたが、上記したコア3事業は増収増益となり、全体でも増益を確保。第3四半期決算発表時点での通期会社予想調整後営業利益7,400億円を上回る着地となりました。
決算発表とともに発行済株式数(自己株式を除く)の2.27%に相当する2,100万株の自社株買い計画(買付期間は本年4/30~25年3月末)を発表。また、6月末を基準として1株を5株とする株式分割も発表しました。
25.3期は売上高9兆円(前期比7.5%減)、調整後営業利益8,550億円(同13%増)が会社計画です。子会社再編もあり減収が見込まれますが、「LUMADA事業」がけん引役となり、増益が見込まれています。
株価は決算発表直後の高値15,310円(4/30)から少し下げた水準にありますが、5/9終値14,165円は昨年末比39%高と好パフォーマンスです。電機セクターの中で相対的に業績の堅調さが目立つうえ、自社株買いや株式分割の効果も期待され、今後も堅調な株価推移が期待されます。
※調整後営業利益は日立が営業利益に代わる経営指標として公表しています。売上収益から売上原価、販管費を差し引いた数値として説明されており、一般的な営業利益と差は少ないと考えられます。
▽日足チャート(6ヵ月)
データは2024/5/10 (日足)12:50時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽業績推移(百万円)
※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
ネットワンシステムズ(7518) ~大手システムインテグレーター。増配や利益の上振れが好感か
■大手システムインテグレーター。大企業や自治体等が顧客
独立系システムインテグレーターの国内大手です。国内外の製品と先進技術を組み合わせ、顧客に最適なICT基盤(インフラ)を提供しています。
以前は、ネットワーク専業でしたが、クラウド・セキュリティ・IoT等のICT基盤全体へと事業領域を拡大。機器販売ではなく、付加価値の高いサービス商品群の売上高比率の向上を目指しています。サービス商品群の売上高比率は上昇傾向で、24.3期は50%となりました。
顧客は大企業から自治体まで多岐に亘ります。売上高構成比(24.3期)は、一般の民間企業などを対象としたエンタープライズ市場が27%、通信事業者市場が22%、中央省庁や自治体を対象としてパブリック市場が21%、グループ会社のネットワンパートナーズによるパートナー企業との協業に特化したパートナー事業が21%です。
■24.3期は各利益が予想を上振れ。増配も好感か
24.3期の上期は大型案件の失注などにより業績は軟調でした。23年10月、24.3期の通期会社計画の下方修正を実施。前年からの下落基調から、さらに一段安する結果となりました。しかし、その後の24.3期3Q決算発表で業績回復の兆しを示し、株価も窓を開けて上昇。さらに、5/8(水)の24.3期の本決算発表を通過し、翌日は前日比11%超の大幅高となっています。
24.3期の売上高は2,010億円(前期比4%減)、営業利益195億円(同5%減)で減収減益。しかし、事前の利益予想※を大幅に上回る結果となりました。また、この利益の上振れを背景に、24.3期の増配を発表。25.3期から原則として累進配当とする制度の導入も発表し、株価の押し上げ材料となったもようです。
※24.3期営業利益 :事前予想165億円、結果195億円
同経常利益 :事前予想161億円、結果191億円
同純利益 :事前予想109億円、結果137億円
▽日足チャート(1年)
データは2024/5/10 (日足)12:50時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽業績推移(百万円)
※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。