スチールテック株式会社
(画像=スチールテック株式会社)
出口 弘親(でぐち ひろちか)――代表取締役社長
1961年、愛知県名古屋市生まれ。1985年、慶応義塾大学商学部卒業後、トヨタ自動車株式会社入社。海外産業車両部、海外企画部、モータースポーツ部、中南米部にて勤務。1997年、父親の経営している年商2.5億円、社員数4人の現スチールテック株式会社 に入社。2007年より現職。2019年には初めての著書「すごい工場」を発刊し、現在発行部数が1万部突破。朝日新聞や日経トップリーダー等各メディアにも取り上げられ活躍の場を広げている。
当社はプレス金型用部品を主力製品とした製造業です。プレス金型用部品は国内唯一の一貫加工体制で高品質な部品を生産しています。また、会社の活きた経営のショールームとして経営コンサルティング事業も展開しています。月に1回現場見学会を開催しており、5年間で全国から650社1600名の方が参加しております。また最近では、大卒新卒採用で大きな成果(23新卒5名・24新卒4名・25内定者4名)を上げている仕組みや、13年間内定辞退率0%の仕組みを公開した人財セミナーも開催しています。

目次

  1. これまでの経歴や事業変遷
  2. ブレイクスルーとなった出来事について
  3. PDCAを強く意識した場面について
  4. 今後の事業戦略や展望について
  5. ZUU onlineのユーザーに向けて

これまでの経歴や事業変遷

ーーまず初めに、これまでの経歴や事業の変遷について教えてください。

スチールテック株式会社 代表取締役社長・出口 弘親氏(以下、社名・氏名略):私の経歴としては、大学卒業後にトヨタ自動車に入社し、主に海外部門で13年勤務しました。トヨタ時代は、色々な国で仕事をし、現在までに訪問国数は50カ国にまで至っております。

私が2代目社長を務める当社は、父親が創業者であり、私が入社した当初は社員数4名で、売り上げ2億5000万円程度の町工場でした。業種としては元より鋼材加工会社ですが、これまで事業を変革し続けてきています。創業65年になりますが、ベンチャー的な会社だと思っています。

今は自動車関連の部品メーカーとして鋼材加工事業を行っておりますが、5年前には加工機能を持った商社を謳っており、7,8年前は鋼材流通を中心に事業を行っていたりと常に時代の流れに沿って変革しています。

また、現在は経営コンサルティング事業としてセミナー事業も行っています。私が5年前に出した書籍が好評で、全国から工場見学の依頼が殺到し、当時無料で行っていたのですが半年待ちが発生するほど殺到していました。それを有料化したのがこの事業のきっかけです。活きた経営のショールームとしてこれまで650社、1600人ほどに受けていただいております。当社の特徴である、外国人エンジニア・技能実習生の活躍や新卒採用の仕組みなども公表しております。

ブレイクスルーとなった出来事について

ーーこれまでにブレイクスルーとなった出来事は何かありますか?

出口:ブレイクスルーは、リーマンショックをきっかけに人財戦略に力を入れるようになったことです。私は前職のトヨタ自動車の時から企画書を書くことや事業戦略、営業戦略を考えることが得意でした。当社に入社後ここに注力していたものの売上は全く伸びず、10年で2倍にいかないぐらいでした。

その状態でリーマンショックを経験し、その状態からさらに悪化し売上が二分の一程度まで下がってしまいました。ここで今までと同じやり方をしていても変わらないと思い立ちました。

リーマンショック前まで求人は出していたものの、なかなか募集がなかった中でリーマンショックをきっかけに世の中の職が少なくなったことで当社にも20代の求職者が応募をしてくるようになりました。売上は二分の一になってしまったものの、これをチャンスだと思い、一気に採用活動を加速させました。

単純に人を採用し、自社で教育を続けたところ自然と売上が増えていき、常に過去最高売上を更新し続けるような状態を作り上げることができました。2012年には外国人技能実習生、大卒の新卒採用に注力し始め、この人財戦略が作り上げられました。

ーー貴社の人財戦略の特徴について教えてください。

出口:当社の人財戦略には、2点の特徴があります。

1点目は日本人採用は大卒総合職の新卒のみを行っていることです。現在、新卒比率が90%であり、平均年齢が28歳になっております。その影響もあり20代の管理職比率が70%を超え、女性管理職比率も60%を超えています。25歳の女性部長がいるほど、若く新卒が育つ環境が整っています。

それ以外にも、新卒を毎年獲得しながらも2021年,2022年,2023年,2024年新卒入社の退職者ゼロ、そしてここ13年間新卒の内定辞退者がいないという、強い新卒採用の仕組みを作り上げることができました。

2つ目は、外国人比率の高さです。様々な職種で外国人を採用しており、全体の約40%は外国人が占めています。特にエンジニアは外国人が多く、技能実習生も取り入れています。その理由は、リスクヘッジと社員の教育のためです。現在は日本を含めて5カ国から社員を抱え、今後も多国籍化を進めていく方針です。

ーーなぜ、日本人採用を大卒総合職採用にこだわるのですか?

出口:新卒採用に強みがあることに加えて、高卒採用は難しいという理由です。トヨタやデンソーを含めた大企業でも採用には苦労しているにも関わらず、中小の工場が高卒を採用して育てるには無理があると考えました。その代わりに独自の新卒採用、外国人採用の仕組みを作り上げ採用活動に注力しています。

PDCAを強く意識した場面について

ーーPDCAを強く意識した場面はありましたか?

出口:当社では2014年から「環境整備」を導入していますが、これはまさにPDCAだと認識しています。セミナーの中でも最も評価の高いコンテンツであり、これだけを見にくる人は少ないですが、一番評価が高いのがこのコンテンツになっています。

これを導入する以前の移転前の工場では、度々危険な事故のようなものも発生してしまっておりました。しかし「環境整備」を徹底し、移行した先の新工場では5Sを徹底するようになったことで、移転以降で大きな事故はなく、売上の成長も加速していきました。

今後の事業戦略や展望について

ーー今後の展望について教えてください。

出口 :現在は、自動車の金型部品の市場で日本一を目指しており、今後もこの市場でNo.1になることを中心に事業を進めていきます。

小さい会社であるためランチェスター戦略をとり、まずは小さなマーケットの中でダントツのNo.1となり確実に会社のブランドを確立したいと思っています。直近では、社員ともこの夢を共有するために450坪の夢工場と呼ぶ新工場を建設しました。

これまで鋼材加工と言いながら変化を繰り返してきており、2023年に売上の主力事業だったレーザー加工からも撤退するまでに至っておりますが、まずはこの自動車の金型部品の市場でNo.1を社員と共に目指していきます。

ZUU onlineのユーザーに向けて

ーーZUU onlineのユーザーに向けて一言お願いいたします。

出口:ぜひ一度当社の現場見学に見にきていただきたいと思っています。私はトヨタ時代に現地現物主義を徹底して叩き込まれておりました。常に提案をする際などに、たとえ海外だとしても、「現場は見たのか?」と言われ続けておりました。当社は活きた経営のショールームとして、全てを公開しています。

見学会の中でも最も人気な環境整備を体感することができ、2014年から導入している徹底的な5Sも見ることができます。セミナーを含めてしか、得られないこともありますので、ぜひ当社の見学会に参加して自社の経営や、PDCAを回す際に生かしていただきたいと思います。

氏名
出口 弘親(でぐち ひろちか)
社名
スチールテック株式会社
役職
代表取締役社長

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