日経平均は2月に34年ぶりに史上高値を更新し、3月初めに4万円を突破したが、4月以降、節目の4万円を下回る水準で推移している。米金利の高止まりもあり、上値が重い状況だ。国内株の軟調が続く中、アクティビスト(物言う株主)はどういう銘柄を物色しているのか。
急上昇の三井松島、旧村上系が25%超取得
三井松島ホールディングスは短期間に25%を超える株式を買い占められた。旧村上ファンド系の投資会社であるシティインデックスイレブンス(東京都渋谷区)が一気呵成に買い進んだのだ。
シティが提出した大量保有報告書で三井松島株6.97%(共同保有を含む)の新規取得が判明したのは5月13日。保有目的は「投資及び状況に応じて、経営陣への助言、重要提案行為等を行うこと」としている。
シティは21日まで7営業日連続で同報告書を提出し、保有割合を28.96%まで高めた。その後は3%程度を売却して保有割合は25.97%に低下(29日時点)したが、断トツの筆頭株主であることは変わりない。
旧村上系の登場でこの間、三井松島株は急騰。大型連休明けに3500円の手前だった株価は一時6210円まで上昇した(6月5日の終値は4605円)。
潤沢なキャッシュに着目か
三井松島は祖業の石炭事業からの構造転換を進めるため、M&Aを積極的に展開している。2019年以降の5年間だけで12件の買収(適時開示ベース)を手がけ、そのジャンルも事務機器のシュレッダー、ペットフード、オーダースーツ、レジロール用記録紙から、架線金物、住宅部材、産業用ローラーチェーン、計測機器まで多岐にわたる。
では、旧村上系はどこに着目したのか。一つはキャッシュが潤沢である点。三井松島の2024年3月期末の現金・預金残高は343億円。これは売上高の44%、総資産の30%に相当する。もう一つはこれまで株価が割安のまま放置されていたことが考えられる。今後、旧村上系から自社株取得や増配などの株主還元を求められる可能性が高い。
旧村上系の別の投資会社、エスグラントコーポレーション(東京都渋谷区)は5月に提出した大量保有報告書で、クレハ株を1.31%、アルプスアルパイン株を1.27%買い増し、所有割合をそれぞれ11.79%、12.59%に高めたことが明らかになった。
旧村上系ではほかに、南青山不動産(東京都渋谷区)が5月末までに大豊建設株を1.04%買い増し、保有割合を14.7%に引き上げた。
大豊建設をめぐっては2022年当時、シティインデックスイレブンスによる保有割合が40%を超えていたが、この株式を麻生(福岡県飯塚市)が買い取った。これにより、旧村上系は大豊建設株から手じまいしたかに見えたが、昨年秋から南青山不動産が同社株を再び買い進めているのだ。