物言う株主(アクティビスト)として知られる香港投資ファンドのオアシス・マネジメントの猛威がこの夏も止まらない。株主提案を突き付けた先は調剤薬局トップのアインホールディングス、もう1社がドラッグストア準大手のクスリのアオキホールディングスだ。株主総会でオアシスと角を突き合わせるのはアインが今回初めて、クスリのアオキが2年連続となる。

またたく間にアインの筆頭株主に

アインは7月30日、本社を置く札幌市内のホテルで定時株主総会を開く。全8議案は会社提案と株主提案が各4つ。

株主提案はいずれもオアシスによるもので、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の改善が必要だとして、社外取締役2人の解任、社外取締役4人の選任、社外取締役に対する新たな報酬制度の導入などを求めている。

実際、アインはコーポレート・ガバナンスを揺るがせる不祥事を抱える。昨年8月、KKR札幌医療センター(札幌市)が発注した敷地内薬局の整備事業をめぐる不正受注問題で子会社社長ら2人が逮捕され、第一審の札幌地裁で今年4月に有罪判決を受けた。

オアシスによるアイン株の9.6%に上る新規保有が明らかになったのは3月初めのこと。オアシスはその後、買い増して持ち株比率を14.89%まで高め、またたく間に筆頭株主に躍り出た。

アインはオアシスの株主提案にいずれも反対を表明し、対決姿勢を鮮明にしている。賛否は総会に諮られるが、資本業務提携先で約7.8%の株式を持つセブン&アイ・ホールディングスをはじめ、北洋銀行、北海道銀行などが安定株主としてアインを支持するとみられ、今回の株主提案は退けられる可能性が高い。

ただ、これまで事実上、“無風”だった株主総会が、いつになく緊迫感に包まれるのは間違いない。

Francfranc買収にも批判の矛先

アインは7月初め、インテリア・雑貨店の「Francfranc(フランフラン)」(東京都港区)の全株式を約500億円で取得し、子会社化すると発表。これに対しても、オアシスは批判の矛先を向けている。

親密先のセブン&アイがFrancfranc株の約15%を保有する大株主であることに絡めて、買収金額がFrancfrancの企業価値に比べて極端に高く問題が疑われると主張している。

調剤再編への“火種”にも

実は、オアシスとアインの対立は今回の株主総会の行方もさることながら、そのもっと先を見据えて市場の注目を集めている。調剤薬局業界の再編の“火種”を抱えるためだ。

記憶に新しいのが隣接業界のドラッグストアをめぐる再編劇。今年2月末、イオン子会社で業界最大手のウエルシアホールディングスと2位のツルハホールディングスが経営統合で合意したが、キャスティングボードを握ったのがオアシスに他ならない。

ツルハ株の約13%を保有するオアシスが保有株のすべてをイオンに売却することによって業界1位・2位連合の誕生に発展した。

ツルハから手じまいした形のオアシスが新たに狙いを定めたのが調剤薬局トップのアインだった。仮に、オアシス保有のアイン株をイオンが引き取ることになれば、イオン主導でドラッグストア、調剤薬局をまたぐ業界を横断する大再編につながる。

M&A Online
(画像=オアシスが大株主だったツルハHDはウエルシアHDと経営統合へ(写真は都内店舗)、「M&A Online」より引用)