この記事は2024年9月27日に「第一生命経済研究所」で公開された「都区部版・日銀基調的インフレ率の試算(2024/09)」を一部編集し、転載したものです。
最頻値が下げ止まりの一方、加重中央値は+0.6%まで低下
以前のレポートで試算した①東京都区部版の基調的インフレ率3指標、②日銀が賃金から物価への波及度合いを分析する際に利用した低変動品目CPIについて、本日公表の9月都区部CPIを用いて計算した。
計算値を見ると、刈込平均値(全国ウェイト換算)は8月:+2.048%→9月:+2.050%、加重中央値(全国ウェイト換算)は8月:+0.7%→9月:+0.6%、最頻値は8月:+1.4%→9月:+1.5%(いずれも前年比)となった。刈込平均値が伸び率横ばい、加重中央値が低下、最頻値が上昇と方向感はまちまちだ。ディスインフレ圧力が特段強まっているわけではないが、反転しているわけでもない。
全国版の低変動品目CPIは7月:1.2%→8月:1.1%、都区部版の低変動品目CPIは8月+1.2%→9月:+1.4%となった。都区部版の伸び率拡大に寄与しているのは、新聞代(地方・ブロック紙)や持家の帰属家賃だ。新聞については個社の値上げが影響したとみられ、全国版の値への影響は幾分マイルドになりそうである。
次月の10月は、年度半ばかつ最低賃金引き上げのタイミングだ。物価上昇のすそ野が広がり、日銀の想定する「第二の力」主導の物価上昇が実現していくかどうかを推し量るうえで、これらの指標にも注目しておくべきであろう。
(参考文献)
星野(2023)「東京都区部版・日銀基調的インフレ率の試算」第一生命経済研究所 Economic Trends
星野(2024)「日銀の「第二の力」指標を再現してみた」第一生命経済研究所 Economic Trends
川本・中浜・法眼(2015)「消費者物価コア指標とその特性 — 景気変動との関係を中心に —」日銀レビュー・シリーズ、15-J-11
白塚(2015)「消費者物価コア指標のパフォーマンスについて」日銀レビュー・シリーズ、15-J-12
尾崎・神保・八木・吉井(2024)「賃金・物価の相互連関を巡る最近の状況について」日銀レビュー 2024-J-2