これまでの事業変遷について
冨田:まずは、これまでの事業の変遷について教えていただけますか?
株式会社NEXYZ.Group 代表取締役社長・近藤 太香巳氏(以下、社名・氏名略):この会社を創業したのは、今から約37年前で、僕が19歳のときでした。資本金50万円でスタートしましたが、その頃はベンチャーやアントレプレナーという言葉さえなかった時代です。当時、ちょうど電電公社が民営化してNTTができた時代で、ダイヤル電話をプッシュ回線に切り替える事業から始まりました。
冨田:その後、どのように発展していったのでしょうか?
近藤:その後、携帯電話の時代がやってきました。まだ一般の人が持つことが少ない頃で、当時の携帯電話は20万円以上もしたんです。しかし、私たちは月々2,000円で携帯電話を持てるようにし、ここから私の「初期投資0円」モデルが始まりました。その後、衛星放送のWOWOWやスカパー!をチューナー0円にして、ETCの普及にも貢献しました。
冨田:まさに先見の明があったわけですね。
近藤:そうですね。携帯電話や衛星放送、ETCなど、次々と新しい市場に参入したあと、ソフトバンクの孫正義さんから突然お電話をいただき、Yahoo! BBプロジェクトにも参画しました。これらすべてで日本国内のトップシェアを達成しましたが、その頃までは代理店としてのビジネスモデルでした。
冨田:そこからどのように変わっていったのですか?
近藤:大きな転換点は13年ほど前に「ネクシーズZERO」という自社完結型のビジネスモデルを始めたことです。これが今でいうエンべデット・ファイナンスで、現在のメイン事業となっています。自社で商品の提供から資金調達まで一貫して行えるモデルを確立しました。これにより、我々は代理店から完全に自社完結ビジネスに移行しました。
冨田:市場の大きさと独自性を追求しているということですか?
近藤:はい、その通りです。私は常に大きな市場で戦いたいと思っていました。大きな市場には多くの競合がいますが、それでもスケールするビジネスを展開したかったんです。ただし、それだけではなく、我々の独自性が重要です。新しいマーケットを作り出すことが、私にとっての挑戦であり楽しみでもあります。
冨田:具体的にはどのような独自性を持たせているのでしょうか?
近藤:例えば、「ACCEL JAPAN(アクセルジャパン)」は、その一例です。これまでは数千万円、時には億単位のコストがかかっていた広告へのタレント起用を、月額40万円~で提供できるようにしました。企業は低コストでタレントを起用した魅力的なクリエイティブを活用できます。このような新しい価値を提供し続けることが、我々の強みです。
冨田:なるほど。市場を見極め、独自のアプローチで価値を提供しているんですね。
近藤:そうです。大きな市場で独自のポジションを築くことが、成功の鍵だと思っています。そして、それを実現するためには、企画力と営業力が重要です。我々は常に新しい市場やビジネスモデルを模索し、独自の仕組みを作り上げています。これが、私たちのビジョンであり、これからも挑戦し続けていきます。
経営判断をする上で最も重視していること
冨田:これまで多くの経営判断をされてきたと思いますが、近藤社長が経営判断をする上で、最も重視しているポイントは何でしょうか?
近藤:はい、私は3つのポイントを重視しています。まず、世の中(業界)の動向を正確に理解すること。次に、その中で何が課題なのかを見極めること。そして、最後に私たちならその課題をどう解決できるかを明確にすることです。この3つがしっかりとハマらないと、どんなビジネスでも進めません。
冨田:具体的にはどのような形でこの考えをビジネスに適用しているのでしょうか?
近藤:例えば、政府は2030年までにLEDを100%普及させる目標を掲げていますが、現状ではまだ60%程度に留まっています。ここでの課題は、LEDに切り替えるための初期費用が非常に高額であることです。電球代や工事費を含め、例えば1店舗あたり約80万円、100店舗であれば1億円以上かかるケースもあります。私たちは、この高額な初期費用をすべて無料で提供し、その代わりに電気代を削減した分の一部を5年間にわたってレンタル料としていただくビジネスモデルを展開しています。
冨田:なるほど、そのような課題解決の仕組みがあるのですね。
近藤:そうです。これにより、企業や自治体は初期費用なしでLEDに切り替え、毎月の電気代が減り、しかも明るさが改善されるというメリットがあります。実際、これまでに10万件以上の導入実績があります。これは日本のコンビニの数の約2倍にあたる件数ですから、かなりの規模です。
冨田:その仕組みで、業界や市場で圧倒的な存在感を持っているわけですね。
近藤:はい。そして、もう1つ大事なことは、「その業界でナンバーワンになれるかどうか」を常に考えることです。私たちは、ナンバーワンになれると確信したビジネスにしか手を出しません。この信念があるからこそ、大規模な市場でも勝ち残れるのです。
経営者としてのルーツ、過去の経験から積み上がったご自身の強み
冨田:近藤社長は19歳から起業されたというお話がありましたが、経営者としてのルーツや強みについて伺いたいと思います。19歳の時からの経験が今の強みにつながっているのでしょうか?それとも、さらに遡ったルーツがあるのでしょうか?
近藤:私が思うに、やはり起業してからが大きなターニングポイントだったと思います。当時は、起業することがカッコいいとか、アントレプレナーという言葉もなかった時代でしたから、周りからは「若造が何をやっているんだ」という目で見られていました。大人たちからは何の評価も得られず、逆に厳しい目で見られることが多かったです。
冨田:なるほど、当時は厳しい状況だったのですね。
近藤:そうです。しかし、その中でいじけていたら、ビジネスは成り立たなかったと思います。先輩にどう可愛がられるか、資金がない中でどうやって商売を成り立たせるかを真剣に考えました。そして結局、お客様の笑顔を増やすためにはどういったサービスを作ればいいか考えることが最も重要だということに気づきました。
冨田:それが、後の大きな事業成功につながっているのですね。
近藤:そうですね、例えば衛星放送事業では、衛星を飛ばすのに何千億円もかかる一方で、視聴者にはどういった料金でどういうものが見れるのか、その価値が伝わっていませんでした。そこに着目して、そこで私たちは、一部分の企画力と営業力という重要なポジションを担って、衛星放送の普及に貢献しました。
現在では銀行とも強力なパートナーシップを築き、1,000億円規模の資金枠を持っていますので、独自のサービスをつくることができたというわけです。
冨田:なるほど、そうした経験が今のビジネスモデルの基礎になっているのですね。
近藤:はい、お金がなかった時代から、どのように企画を立て、課題を解決し、営業するかを繰り返してきました。そして、圧倒的にナンバーワンのものを普及させてきたので、みなさんにNEXYZ.ならやれると感じていただき、その信用力を基に今では独自のサービスを作り上げることができています。
冨田:お客様に購入してもらうための発想力が、ビジネスを成功に導いてきたのですね。
近藤:私たちは、どうすればお客様にとって魅力的で、購入しやすい仕組みを作れるかを常に考えています。たとえば、Yahoo! BBプロジェクトでは、回線を早く、そして価格を安くするだけではうまくいかなかった、2ヶ月間無料のお試し期間を提案したことで、普及が加速しました。
思い描いている未来構想
冨田:今後の展望についてお伺いしたいのですが、NEXYZ.Groupは時代とともに事業を進化させてきました。これからのテーマや未来のビジョンについて教えていただけますか?
近藤:まず、基本的な方向性は、これまでの事業同様、様々な課題解決に取り組むことです。例えば、今やっているLEDや空調機器の商業分野から、農業や工業にも領域を拡大しています。我々のビジネスモデルがさらに広がりを見せることが、これからの目指す方向です。
冨田:ビジネスの幅をさらに広げていくということですね。
近藤:そうです。そして、もちろん海外市場も視野に入れています。会社というものは、ただ存在しているだけでは生き残れません。「あってもなくてもいい会社」ではなく、「あって便利な会社」でもなく、「なくてはならない会社」でなければならないんです。これまでの代理店時代は、価格を下げたり、お得なサービスを提供することで成長してきましたが、今はCO₂の排出削減に力を入れており、これまでに200万トンの削減を実現しています。
冨田:200万トンの削減というと、具体的にはどれくらいの規模なのでしょうか?
近藤:人間1人が1年間で排出するCO₂は約9〜10トンと言われています。つまり、200万トンは約20万人分の排出量に相当します。渋谷区の総人口が1年間、息を止めて電気を使わないような規模です。それほど大きなインパクトを与えているということです。
冨田:それは非常に大きな貢献ですね。
近藤:こうした取り組みが評価され、当社は環境大臣からエコ・ファースト企業の認定を受けたり、ムーディーズからも最高評価を得ています。ただし、このビジネスロジックはまだ多くの人に理解されていません。特に日本では、「エンベデッド・ファイナンス」という言葉自体があまり浸透していない。銀行や金融機関では理解されていますが、一般の方々にはまだ認知されていません。
冨田:認知度の向上が次の課題ということですね。
近藤:その通りです。私たちのビジネスモデルやサービスが市場にもっと広く知られる必要があります。そうすることで、さらなる成長が見込めるでしょう。
冨田:組織面でも変革が進んでいると聞きましたが、具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか?
近藤:最近、エグゼクティブ・スター制度を導入しました。これは、地域に密着した子会社を設立し、それぞれの地域に経営責任者を配置する仕組みです。11社に分け、それぞれの社長や執行役員を53人設けました。平均年齢は38.2歳で、最年少は30歳です。女性比率も11.3%です。私たちのチーム力は強いですが、私一人ではなく、次世代の経営者を育てていくことが大切です。経営者育成が私の最大の仕事だと思っています。
冨田:まさにサクセッションの一環ですね。組織改革が進む中で、さらにビジネスのスケールアップが期待されます。
近藤:現場からアイデアが生まれ続ける会社でありたいと思い続けています。これからも全員が責任を持って、サービスを進化させていくことが重要です。
冨田:本日は貴重なお話をありがとうございました。
- 氏名
- 近藤 太香巳(こんどう たかみ)
- 社名
- 株式会社NEXYZ.Group
- 役職
- 代表取締役社長 兼 グループ代表