◉非マレー系のマレーシア人経営者の魅力


このような環境下で育ってくる非マレー系の経営者、特に華人の経営者は実に逞しく魅力的で驚かされることが多いです。政府関係者には十分に気を配りつつも、華人同士の結びつきを非常に大事なものとし、必然的に商売拡大のためには国外に積極的に目を向けざるを得ないため、国際感覚の豊かなオーナーも多く見られます。
その層の深さは、シンガポールのビジネスオーナーよりも深いのではないでしょうか。

そんな中から、普段私がお世話になっている方々を少しご紹介してみましょう。

まず、上記のコミュニティーの元締めともいえるAさんは、元々はレストランオーナーでした。しかし、オーストラリアの上場鉱山会社(事実上の休眠会社)を友人たちと二束三文で買収し、その企業を使ってオイルを掘り当てます。そして、中国の企業に元々の投資金額の50倍くらいで会社を転売させたというのがブレークスルーのきっかけだとおっしゃっていました。

今でも違う上場会社を全く同じ方法で買収し、時価総額が300億円くらいの会社に成長させています。
そんな彼の推定資産は200億円くらいでしょうか。

間違いなく1代で築かれたものであり尊敬に値するものだと思います。
しかしながら、彼が更に凄いところは、そのような資産を築いても日々一生懸命に、金融市場にも向かい合い日本円にして50万円、100万円の利益を大事にし、日本株のアイデアも求めてくる一方で、彼自身のコネクションがもたらすチャンスがくれば一つの銘柄に30億円くらい突っこみます。現在もそのポジションを地道に作っておられるのを目の当たりにしています。

人間的に非常に真摯な方で、些細なことでもしっかりと感謝していただけ、私のことを「ハードワーカーなグッドガイだから面倒見てやってくれ」という具合に、コミュニティーに紹介して頂けるようになってきました。
彼を見ていて思うのは、人間関係を本当に大事にし、そのコミュニティーにおいて信頼されるポジションを得つつ、お互いに助け合うことを繰り返して行く中で、長い期間を経て培われる結びつきの強さを感じさせられます。

また、その方に最近ご紹介いただいた方で、インパクトが強かったオーナーもご紹介してみましょう。
30代後半の方ですが、去年の8月くらいから日本のラブホテル経営に乗り出したという方です。

ラブホテルというビジネスモデルが、回転率が数百パーセントになりえる程の潜在的に効率の高いものだというのは知られた話かもしれません。しかし、それをマレーシア人の比較的若いオーナーが、去年の8月という日本の不動産に投資するにしてはこの上ないタイミングで開始し、既に30億円ほどのポートフォリオを組んでいると聞かされたら驚かざるを得ないでしょう。
「自分は不動産投資として考えていてそれは15パーセントくらいの利回りが出て、オペレーションについては優秀なパートナーに任せているから投資しない理由はないよね。」なんてあっさり言われてしまうと、経営者の経営者たる才覚、嗅覚に舌を巻かざるを得ません。また同時に、そんな人に対して自分はどんな付加価値を与えることができるのだろうかと真剣に悩んでしまいます。

日本のラブホテルに30億円投資できる人の総資産は、その5倍はあると見積もってもいいのでしょう。

このような出会い、驚きがあるのでプライベートバンカーという仕事はやめられません。また、マレーシアの華人コミュニティーのダイナミズム、恐るべしですよ。

BY N.S