新しい資本主義の担い手であるベンチャー企業。政府からユニコーン100社創出が宣言されたこの状況下において、「現在の成長企業・ベンチャー企業の生き様」は、最大の関心事項と言える。ジャンルを問わず、一社のトップである「社長」は何を思い、どこにビジネスチャンスを見出しているのか。その経営戦略について、これまでの変遷を踏まえ、様々な角度からメスを入れる。
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これまでの事業変遷
ーーまずは、これまでの事業の歩みについて教えていただけますか。
株式会社カウンターワークス 代表取締役社長・三瓶 直樹氏(以下、社名・氏名略) カウンターワークスは2014年に設立し、現在11期目の会社です。「すべての商業不動産をデジタル化し、商いの新たなインフラを作る。」というミッションを掲げ、商業不動産を軸に様々なサービスを展開しています。商業不動産は、一見すると身近なようで実態は理解されにくい分野です。例えば、皆さんが訪れるショッピングモールやレストラン、働く場所であるオフィス、またはECサイトの商品を配送する倉庫なども、すべて商業不動産に該当します。
不動産業界は、他の産業と比較してデジタル化が遅れていると感じています。特に商業不動産は、BtoBで利用されることが多く、その効率化が進まないと出店する側である事業者のパフォーマンスにも影響を与えます。効率が上がれば、事業者が提供する製品やサービスの質も向上し、結果的に社会全体が良くなる。私たちはそのために、新しいインフラを提供するという使命感を持っています。
ーー現在展開しているサービスについて、詳しく教えていただけますか。
三瓶 当社の主力サービスの一つが「 SHOPCOUNTER(ショップカウンター)」です。このサービスは短期間で不動産を賃貸するポップアップストアや催事イベント向けのマーケットプレイスです。スペースを借りたい事業者と、空いているスペースを貸したいオーナーをつなぎ、取引の効率化を図っています。これまで、登録スペース数は2万5000件、テナント登録数は7万3000件を超えています。成約時に取引額の一部を手数料としていただく成功報酬型のビジネスモデルを採用しています。
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このようなサービスは、特にコロナ禍以降の需要が顕著でした。長期契約が難しい中、短期間で試験的に出店したいという需要が増え、それに伴い供給側も柔軟な対応を求められるようになりました。これに応じて、スペース提供者も増加し、当社の成長を後押ししてくれました。
ーー他にはどのようなサービスを展開していますか?
三瓶 もう一つが「SHOPCOUNTER Enterprise(ショップカウンターエンタープライズ)」というサービスです。こちらは商業施設を運営する大手企業向けのソリューションで、自社の物件を管理し、運営する専用マーケットプレイスを構築できるSaaS製品です。例えば、マルイさんのような企業は全国に複数の施設を展開していますが、各施設内で出店可能な区画情報をオンラインで統一的に管理し、マーケットプレイスとして運営することが可能です。この製品は、単に効率を追求するだけでなく、自社チャネルを育成したいというニーズに応える形で提供されています。
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ーー商業不動産のデジタル化の意義について、改めてお伺いしたいのですが。
三瓶 商業不動産は、長らく非効率な構造が続いてきました。取引の多くが電話やFAXといったアナログな手段で行われ、情報の透明性や流通速度が大きな課題となっています。一方で、EC市場が成長し、店舗の在り方が変わりつつある中、従来のような長期契約型の店舗運営のみでは成り立たないケースも増えてきました。この変化に対応するためには、効率化が急務です。
私たちは、単なる不動産業界の効率化にとどまらず、これを通じて社会全体の生産性向上を目指しています。例えば、短期契約の活用や新たな出店者の獲得を支援することで、商業施設が持つ潜在的な価値を最大化し、消費者に新たな選択肢を提供できると考えています。
ーー競合についてお聞かせください。御社のサービスと似た取り組みをしている会社はありますか?
三瓶 直接的な競合は現時点では少ないですが、例えばSIer(システムインテグレーター)企業が独自システムを構築するケースなどは考えられます。ただ、既存の商業不動産業界の構造に深く入り込み、具体的な課題を解決するために特化した製品を提供している点では、当社が独自性を持っていると思っています。
経営判断をする上で重要視している点
—— 貴社の独自のサービスから少し離れて、経営判断について伺いたいと思います。会社経営の観点から社長が今重要視している点についてお聞かせいただければと思います。
三瓶 当社が目指しているビジョンやミッションに即しているかどうかが大きな判断基準です。当社には大事にしている価値観が3つあり、それに即しているかどうかを常に考えています。合理的な側面は判断しやすいので、それほど悩むことはありませんが、どちらにするか迷う場合には、ビジョンやミッションに寄与するかどうかが大きな判断軸となります。
—— その3つの価値観とはどういったものですか教えてください。
三瓶 「Go Forward」、「One Team」、「Keep Straight」という3つのキーワードを使っています。「Go Forward」は前進を意味し、特に私たちが関わる大きくて古いマーケットをより良いものに変えていくためには、長期的な視点でトライアンドエラーを繰り返すことが重要だと考えています。「One Team」は、各メンバーがプロフェッショナルな意識を持ち、自分を高めていくことで、良いチームが形成されるという考えです。「Keep Straight」は、まっすぐであること、王道やフェアネスを重視するという意味です。長期的なビジネスを行う上で、利他的で真摯的、誠実であることが非常に重要だと考えています。
今後の事業展開や投資領域
—— 今後の事業展開や投資領域についてお聞かせいただければと思います。
三瓶 今、私たちはマーケットプレイスとSaaS、2つのビジネスを行っています。SaaSについては、商業施設が出店者を誘致する業務(リーシング)があるとお伝えしましたが、その誘致活動を支援する製品を提供しています。
商業施設を運営するためには、誘致だけではなく、入居いただいた後のサポートや管理が必要です。商業施設の運営には様々な業務があり、そういったところでプロダクトのラインナップを広げ、我々の製品で商業施設の運営全般を支援できるようにしたいと考えています。
メディアユーザーへ一言
—— メディアユーザーへ一言お願いします。
三瓶 商業不動産という言葉は日常生活ではあまり耳にしないかもしれません。しかし、実際には街や都市の基盤として、日々の生活と密接に関わっています。この分野の利活用を向上させることで、より良い仕組み作り、そしてより良い社会作りに貢献したいと考えています。今後とも応援のほど、よろしくお願いします。
- 氏名
- 三瓶 直樹(さんぺい なおき)
- 社名
- 株式会社カウンターワークス
- 役職
- 代表取締役 CEO