メキシコペソ見通し
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「インフレ上昇も全会一致で0.5%利下げの背景。不確実性」メキシコペソ見通し

予想レンジ 7.2-7.7

(通貨4位、株価3位)

 (ポイント)
*ペソは12通貨中4位、株価は3位と悪くはない
*米英貿易協定合意でリスク選好
*リセッションは免れるも低成長、指標は引き続き弱い
*4月消費者物価、インフレ上昇も不確実性の中で追加利下げ
*ゴールドマン・サックス、2025年GDP予想を上方修正
*4月消費者信頼感指数が再び低下、家計は警戒感を強める
*USMCA再検討を予定早め今年後半に開始も
*米国は郷里送金に課税を示唆
*関税問題ではUSMCA協定で免税部分がある
*6月1日に昨年ペソを急落させた要因となった裁判官選挙が実施される
*IMFが成長見通し下方修正、シェインバウム大統領が反論
*公的債務は6年ぶりの高水準(前政権の遺産)
*フィッチが投資適格級を維持、好悪材料併記
*S&P、フィッチが現大統領のメキシコの財政運営を評価

(ペソは12通貨中4位、株価は3位と悪くはない)
 ペソは米英・米中貿易協定合意でリスク選好の円安ペソ高が進み先週末は年初来12通貨中3位へ浮上したが、今週は再び円に抜かれ4位に後退。ボリバン3σ下限から2σ上限まで戻り調整が入った。
ボルサ株価指数は世界3位で年初来17.06%高。10年国債利回りは9.86%。

(全会一致で0.5%利下げ、7会合連続利下げ)
  中銀は15日の金融政策会合で、政策金利を0.5%引き下げ、8.5%とした。インフレ率は中銀が目標とする範囲内にとどまっているものの、貿易を巡る不確実性が続いていることなどが背景にある。
決定は全会一致。今回の利下げで政策金利は2022年8月以来の低水準になった。
中銀は声明で、今後の会合でも今回と同程度の幅での利下げを検討する可能性があるとした。4月消費者物価は3.93%とインフレターゲットの上限の4%に近いが、先の読めないトランプ関税がメキシコ経済に影を落としているとした。6月の会合でも追加利下げが予想されている。

(ゴールドマン・サックス、2025年GDP予想を上方修正)
ゴールドマン・サックスは、米国経済の改善とメキシコ国内経済の活発化を理由に、メキシコの2025年のGDP予想を0.5%の縮小予想からゼロ成長に上方修正した。
 最近の米英、米中の貿易協定により景気後退リスクを45%から35%に低下させた。
 メキシコの1QGDPは、2024年末の0.63%の縮小後、農業や鉱業といった第一次産業の8.09%の急成長に牽引され、0.16%回復した。しかし、製造業とサービス業は依然として低迷しており、構造的な脆弱性を浮き彫りにしている。
 米国が提案している鉄鋼、アルミニウム、自動車への25%の関税が発動されれば、メキシコのGDPが2.5~4%減少し、50万人の雇用が失われ、輸出コストが300億ドル増加する恐れがあると警告している。

国内財政の圧力は依然として続いており、公的債務はGDPの53%に達すると予測され、1Qの石油収入は13.8%減少した。最低賃金の12%引き上げは消費支出の押し上げを目指しているが、インフレとペソの変動リスクが懸念される。

 利下げと財政再建策(1Qの財政赤字は71%減少)は慎重な楽観主義を示しているものの、アナリストは回復力を過大評価しないよう警告している。石油依存、インフラプロジェクトの資金不足、製造業の低迷といった構造的な課題が、長期的な成長を脅かしている。

(消費者信頼感指数が再び低下、家計は警戒感を強める)
4月の消費者信頼感指数が3月の45.9から45.3ポイントに低下。これは2023年10月以来の最低水準であり、6か月連続の下落となっている。

この下落は、メキシコの家計の間で警戒感が高まっていることを示している。経済の見通しと将来の両方に対して、より懐疑的な見方をしている。
世帯は、国の現状に対する評価が42.1ポイント、来年の見通しが48.6ポイントと、いずれも弱含みとなっていると報告した。家計の財政状況に対する期待も低下し、高額な買い物に対する意欲も29.4ポイントに低下した。

インフレ率の上昇もこの悲観論を助長している。4月の年間インフレ率は3.93%に達し、3月の3.8%から上昇した。インフレ率は目標レンジ内にとどまっているものの、購買力を低下させ、消費者心理を冷え込ませている。
小売売上高と個人消費も、慎重なムードを反映して軟化している。消費者信頼感の持続的な低下は、メキシコの家庭が直面している真のプレッシャーを浮き彫りにしている。

経済の逆風、根強いインフレ、そして不透明な貿易環境が相まって、楽観的な見方を弱め、支出を鈍化させている。企業と政策担当者は、2025年に向けて、安定化の兆候か、さらなる落ち込みの兆候かを注視している。