東証スタンダード上場のセンサーメーカー、芝浦電子をめぐる台湾電子部品大手のヤゲオ(YAGEO)と精密部品大手のミネベアミツミの買収戦が中盤を迎えた。同意なき買収に打って出た形のヤゲオだが、同社が提示した買付価格はミネベアミツミを700円上回ったまま、ここまで有利に戦いを進めている。

一方、ホワイトナイト(友好的買収者)として名乗りを上げたミネベアミツミは今後、劣勢をどう跳ね返すのか。

目下、買付価格に700円の開き

芝浦電子へのTOBを始めたのはミネベアミツミが5月2日、台湾ヤゲオが同9日。1株あたりの買付価格は前者が5500円、後者が6200円で、700円の開きがある。

23日の芝浦電子株価の終値は5990円。同社株価はヤゲオがTOBを開始した今月9日には一時6240円の年初来最高値をつけたが、その後は6100円前後、最近は6000円をはさむ値動きとなっている。

現状の株価水準が続くようであれば、大半の一般投資家にとっては市場で売却するよりも6200円を提示したヤゲオのTOBに応募する方が儲けを期待でき、ヤゲオとしてはTOB成立の確度が高まる。これに対し、ミネベアミツミはTOBの成立が見込めない状況にある。

こうした中、芝浦電子は21日、これまで反対としてきたヤゲオによるTOBへの意見について、「留保」に変更したと発表。一方、ミネベアミツミのTOBに対しては賛同を維持するものの、応募するかどうかは推奨をやめ、株主の判断に委ねる「中立」の立場をとる方針に改めた。

翌22日、ミネベアミツミは6月9日までとしていた買付期間を同12日まで3営業日延長した。ただ、5500円とする買付価格は変更を見送った。

買付価格をめぐってはTOB開始に先立ち、ヤゲオが2度、ミネベアミツミが1度、それぞれ引き上げて現状の水準となった経緯がある。

ヤゲオが芝浦電子の完全子会社化を目的とする買収提案を発表したのは2月初め。芝浦電子の賛同を得たうえで、5月の大型連休明けから1株4300円でTOBを始めると予告。買付価格はTOB公表前の終値に約37%を上乗せした。

ヤゲオ、買収金額4割以上膨らむ

事態が動いたのは4月10日。ミネベアミツミがヤゲオに対抗して芝浦電子の買収に名乗りを上げたのだ。買付価格は1株4500円で、ヤゲオを200円上回った。

芝浦電子は即座に、ミネベアミツミのTOBに賛同を表明する一方、意見を留保していたヤゲオのTOBに反対を表明。ホワイトナイトと呼ばれる友好的買収者と、敵対的買収者の一騎打ちの構図となった。

その後、ヤゲオが買付価格を5400円に引き上げれば、ミネベアミツミが5500円で巻き返し、さらにヤゲオが6200円とし、ミネベアミツミを再度突き放した。ヤゲオの場合、2度の買付価格引き上げで、買収金額は当初想定の655億円から945億円まで4割以上膨らんでいる。