原油安によりルーブルが危機的状況に瀕している。12月15日には、一時1ドル=80ルーブルまで下落したのだ。11月のレートが1ドル=45ルーブル程度だったことを考えると、1カ月で35ルーブルも下落したことになる。その後、ロシアは、政策金利を10.5%から17.0%まで引き上げ、12月23日23時の時点のレートでは、55ルーブル程度まで戻っている。
一見すると戻って良かったと思われるかもしれないが、17%の金利ということは、100万円預けて1年間で17万円も利子がつくということである。10年間の複利で計算すると100万円が500万円近くになる。いかに、この政策金利が異常な数字であるかがわかると思う。政策金利の引き上げは、景気上昇に伴うインフレ局面では有効に機能するが、景気後退局面で金利を引き上げると設備投資ができなくなり、一気に不況が加速する。ロシアはそこまで追い詰められているということだ。
プーチン大統領も予測していなかったルーブル安
ロシアのルーブル安の原因は、ウクライナ問題による欧米諸国による経済制裁と原油安によるものであるが、ここまで原油安が進むとはプーチン大統領も予想をしていなかっただろう。プーチン大統領は、今でもロシア軍によるウクライナでの活動を否定し、「地元の自衛勢力が活動している」と発言しているが、多くのマスコミが現地で直接取材してロシア軍であることを確認しているし、欧米諸国もロシア軍による侵略と断定している。これは明らかに国際法違反であり、経済制裁は自業自得の結果といえる。
もともとロシアは、高い原油と天然ガスにあぐらをかき、何の努力もせずに輸出の7割、連邦予算の半分を石油ガスが占めるという経済構造にあった。つまり、原油安になれば、経済に危機的状況が生まれることは明らかであったのに、産業を育成する努力をしてこなかったのである。今回はその報いを受けることになったわけである。
以上の通り、ロシアの経済が悪化したことはロシアの責任だとしても、グローバルな経済活動を行っている現代においては、ロシアが破綻すれば、その影響は欧米や日本にも及んでくる。したがって、ルーブルの動きには今後十分注視していかなければならない。現に、資源国や新興国の経済が悪化する懸念が高まっており、金融情勢が不安定になっている。