②国の覚えがよくなる~経営陣にとって最重要事項〜
金融機関というのは、他の業界と比べても遥かに厳しい法規制にがんじがらめにされていて、金融庁などのお上の顔色一つで金融庁の検査が厳しくなったり、ターゲットにされてしまうこともある世界です。お上と密に連携を取り、良好な関係を築くということは直接業績などにも関わってくることなのです。
そして、お上の覚えが良くなるためにはどうすればいいかというと、「お上がやりたいことをきっちり行う」という当たり前のことなのです。
今回のNISAはまさにお上が音頭をとって投資家層を広げようとしていることなのですが、そこで仮に、A社は獲得口座数が1万口座でB社は100万口座でしたということになると、当然国としてはB社に対して良い印象を抱くわけで、そうすると例えば経営状態がやや悪くなってきた時などに親身になって相談に乗ってくれたり、あるいは国から支援を受けやすくなるということもありうるかもしれません(便宜を図るとか、そういう話ではなく)。
となると、それは金融機関に取って大きなメリットと言えるので、国策に乗る、ということは当然のごとく必須事項となるのです。
③投資家のリスク許容度を上げる第一歩~最後はリスク商品への乗り換えがやってくる
NISA口座の非課税制度自体は年間100万円までの投資にしか適用されない訳ですが、今まで投資をしたことのない投資家にとっては「1度リスク商品に投資した」ということで、それまでかたくなに銀行預金しかせずリスク商品への投資を拒んでいた人の、投資へのハードルが低くなる効果があります。
ここが恐ろしいところで、株のようなリスク商品に一度手を付けると、それまで元本が変動することを極端に嫌っていたような人でも「毎日自分の資産が変動する」ということに徐々に慣れてくるのです。しかし、そういった投資初心者の方は、「元本が変動しなさそう(に見える)な仕組み債なら投資しても大丈夫かな」などといった行動を、営業マンに勧められるがままに購入してしまうことがあります。
実際には仕組み債はリスクの高いものも多いです。しかし、それにも関わらず、証券会社が取る手数料も高いもので5%に上るものもあるドル箱商品なので、手数料目的で営業マンは頃合いを見つついずれは提案してくるのではないかと思われます。
そして、これはとても怖いことです。例えばリーマンショックの時には、最初個人向け国債を勧められて買った人が、いつの間にか日経平均連動の仕組み債に乗り換え投資をして、元本が固いと思っていたら半値近くになってしまったという例が多数ありました。
以上、金融機関がNISA口座の開設に力を入れる理由をまとめてみました。
NISA口座で投資の利益が非課税になるとはいえ、結局元本が変動するリスク資産に投資をするということは変わりません。金融機関側は、それをきっかけに、徐々に手数料の高い投資=投資家にとってリスクの高い投資を勧めてくる、ということも十分想定されます。
結局、投資は自己責任ということになってしまうので、「NISAで非課税だから」と安易に投資を始めるのではなく、ちゃんと自分の懐と相談して投資を始めるかどうか検討される方良いのではと思います。。
BY gel