事実上出口戦略の無い状態が日銀のQE

日銀は今年新発国債のほとんどを自行で買い入れる意向で、現状では異常なほどその金利が下落傾向にあるが、この国債買い入れを止めると宣言した途端に国債の長期金利は急騰し始めることが予想され、国債の利払い増加を避けるためにも異次元緩和を続けざるを得ない状況に陥っている。ただこのQQEの継続はコントロール不能なほどの円安状況を次元しかねないのも事実であり、年間3兆円にも及ぶ日経ETFの買い付けも含めたこの前代未聞の財政ファイナンスが著しい負の遺産を積み上げつつあることだけは間違いない。

現状で日銀のバランスシートは300兆円に迫る勢いだが、これで1割の評価損が出た場合いきなり債務超過の状況となってしまうことを忘れてはならない。2016年7月の参院選までこのままの緩和を続け、しかも2017年4月には消費税増税が確定している中にあって、日銀が出口戦略をとる余地はなく、しかもひとたび国債購入中止を宣言すれば長期金利は急騰し、景気は大きく後退、途端に国は利払いのために大きな赤字を背負い込むことになり、財政破綻へと国際市場の関心が移ることになるのは間違いない状況だ。消費税率を上げても税収は国債の利払いに吹っ飛ぶという皮肉な状況に直面することになるのだ。


量的金融緩和がデフレの特効薬?

世界的な先進国のデフレ懸念から米国に端を発した量的金融緩和に日本が追随しECBの実施観測などを受けてまるでデフレの特効薬であるかのような扱われ方をしているが、先進国で長期に渡って実際にデフレに陥った経験を持つのは日本だけであり、このQEも治験のないぶっつけ本番の人体実験さながらの状況に陥っており、これが結果としてデフレを脱却できるかどうかについては、まだ全く決まったわけではないことも認識しておく必要がある。デフレ脱却を旗印にした日銀の財政ファイナンスによるバランスシートの拡大は、少なくともこれまでの世界経済の歴史の中ではハイパーインフレを起こしてほぼ債務を帳消しにするかデフォルトするしかその最終的な解決策を持たないのが現状だ。

かかる状況をどこまで正確に理解しているのかは不明だが、自身の名前を冠にして株価の上昇と制御不能寸前の円安を自画自賛する首相と、自らデフレ脱却の救世主を買って出たものの、窮地に立たされて始めている日銀総裁が今後どのような判断をしていくのかが極めて注目される事態となってきている。

(ZUU online)

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