カナダ中央銀、原油安対策で突然の利下げ 頼みの綱は米国経済

2014年末にかけて、原油価格の下落に拍車がかかり、2015年に入り1バレル=44ドル台に突入し、約5年9カ月ぶりの安値を付けた。ガソリン価格の低下や燃料費のコスト削減などのメリットが期待できる日本経済とは異なり、原油を輸出する資源国にとって、価格の下落は国家財政をも脅かすリスクとなる。

経済の回復基調が続く米国の隣国、カナダは輸出の約3割をエネルギー関連製品が占める。さらにオイルサンドという砂岩から石油を精製する方法が広がっているが、生産コストが高く原油価格の下落は大きな打撃となる。


原油安対策に予想外の利下げ、成長率見通しも下方修正

これまで原油安の影響を最も受けたのはロシアだろう。石油価格の下落とともに、ロシア通貨ルーブルが売り込まれ、ドルに対して一時3割以上もルーブル安が進んだ。ロシアの場合、ウクライナ問題による経済制裁の影響も経済危機を助長した。一方の北米カナダは、ロシアのような地政学リスクはなく、むしろ隣国アメリカの経済が好調なことから、原油安に見舞われる中、米経済にけん引される形での成長が見込まれる。昨年10月には、2015年の成長率見通しを2.4%としていた。国際通貨基金(IMF)が今年1月に明らかにした世界経済の見通しでは、日本の成長率は0.6%、デフレ懸念がくすぶるユーロ圏は1.2%の低成長にとどまるとしたが、カナダの経済は先進国地域全体の成長率(2.4%)と同じレベルで推移するとみられていた。

こうした楽観論に暗雲が立ち込めたのは、1月21日、カナダ中央銀行が予想外の利下げに踏み切ったからだ。政策金利をこれまでの1.0%から0.75%に引き下げると同時に、15年の成長率見通しも2.4%から2.1%に下方修正。カナダ中銀は、原油価格の下落基調が「2015年、またはその後数年のカナダ経済にとり明らかにネガティブ」とし、利下げ措置により、原油安の影響を最小限に食い止めたい考えだ。


頼みの綱は米国経済回復

原油安の悪影響に苦しむカナダだが、明るい材料と期待されるのが、隣国アメリカ経済の回復だ。カナダからの輸出の4分の3ほどは米国向け。利下げにより、為替相場で、カナダドルは対米ドルで1.24カナダドルまで下げ、5年8カ月ぶりの安値圏で推移している。カナダドル安が輸出にある程度追い風となるだろう。

一方米国の成長率は、昨年10月のIMF見通しから0.5%上方修正され、3.6%と先進国では最も高い伸び率が期待される。原油安に頭を悩ませるカナダ経済にとって、米国経済の回復をどこまで取り込めるかが、自国経済の安定飛行の鍵となりそうだ。

(ZUU online)

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