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昨年、欧米諸国ではトマ・ピケティの『21世紀の資本論』という経済本が飛ぶように売れ、大ブームとなった。日本では昨年末に邦訳版が登場し、ようやく話題が高まっている。

内容に興味のある方は6,000円弱のこの本をぜひ読んでいただきたいが、かいつまんでその要旨を説明すると、格差社会がさらに進行し、中間層が消滅する未来社会の到来を示唆した内容である。

アベノミクスで景気が回復したとか、給与の引き上げが期待できそうだとか、現象的な経済状況は世の中を駆け巡るが、今の若者が経済的に豊かな人生を築こうと考えるのであれば、もっと本質に切り込んで骨太の発想で人生のグランドデザインを描く必要がある。現在の経済政策で何が起きているのかを正確に把握し、そのリスクに対して適切に対応をすることができなければ、豊かさからかけ離れたその他大勢の1人となることは間違いない。それでは一体、豊かな人生を築くためにはどうしたらいいのだろうか。


アベノミクス・日銀政策の本質を見抜く

アベノミクスが機能すれば、なんとなく景気もよくなって、給与の引き上げを期待する若者も多いことだろう。しかし今、日本銀行を中心に行われている経済政策は、円の切り下げと無理やり株価を押し上げることで、企業収益のかさ上げと企業の含み資産の増加を図っていることである。ある種、国策バブルの醸成だ。しかしこれを引きで見ると、国民の資産は円安進行で目減りをしており、株式のようなリスクの高い金融資産を保有しないかぎり、何もその恩恵にあずかれていないのが実状だ。もし生命保険などに加入していれば応分の収益を受けとることはできるが、直接的なリスク資産投資に比べれば、その額は微々たるものである。

株価上昇で企業収益が帳簿上増えても、経営者は固定コストとなる人件費を簡単には引き上げしない。実際、戦後の資本主義経済で、株価上昇で労働分配率が高まった国はどこにも存在しない。