イオン <8267> が発表した「平成 27 年2月期 第3四半期(3月〜11月)決算短信(連結)」によると、営業利益が493億円と、前期と比べ47.9%も減少した。利益が半減した原因は、GMS(総合スーパー)事業が、約289億円の赤字、SM(スーパーマーケット)・DS(ディスカウントストア)・小型店事業が、約2億円の赤字、中国事業が約21億円の赤字となったからだ。特に赤字が大きいのがGMS事業で、その内容は、イオンリテールが182億円の赤字、ダイエーが158億円の赤字となっている。
このように総合スーパーの営業利益が減少した背景には、消費増税後の値付け戦略に失敗し、顧客離れが起きていることに加え、既存店舗の老朽化やネットスーパーの台頭などが挙げられる。高度成長期の大量生産大量消費の時代は終わり、少量多品種が求められる時代になり、安いだけでは物は売れず、付加価値の高いものや希少性があるものが求められる時代になったということもある。
かつてダイエーは、「流通革命」をおこし、徹底的な価格破壊を行い、現代の消費者主体型の流通システムを確立させた。それが、今となっては、イオンのお荷物になっており、「ダイエー」というブランドも消滅することが決まっている。勝ち組であったイトーヨーカ堂も、平成27年2月期 第3四半期の営業利益は、前期より62億円減少し、25億円の赤字になっている。それに対して、コンビニのセブン-イレブンは、前期より62億円も多い、1700億円の黒字となっている。消費者は、総合スーパーよりもコンビニに移っていることがわかる。
これに輪を掛けて、アマゾンや楽天 <4755> 、ネットスーパーなどの展開がある。若者の利用はもちろんのこと、重い荷物でも玄関先まで運んでくれる利便性や、過疎地や高齢化により買い物が不自由になっている人についても、通信販売の需要は伸びている。かつて、大きな店舗は、見る楽しみもあり人気があったが、一方で、少しだけ買い物をしたい場合、例えば、ジュース1本を買うときでも、大きな店舗の中で売り場を探して、長蛇のレジに並ばなければならない。さらに最近では袋すら有料である。これでは、コンビニが売れるのも当然である。また、洋服も安いものは「ユニクロ」や「しまむら」、高い洋服や贈答品は「伝統のある百貨店」で購入するため、総合スーパーで買わなければならないものは少なくなってきている。
業績不振の高いの鍵は専門店事業
このような、顧客のニーズに応えられなくなった業態は、市場から退場してもらう方が経済合理性に適っており、ダイエーはまさにその典型といえる。その親会社であるイオンもこのままなら、退場は免れないだろう。もっとも、モールなどのディベロッパー事業は、今期、289億円の営業利益があり、用地買収や大型建築物の建設についてのノウハウを有しているので、その分野での活躍は期待できるだろう。
したがって、業績不振を打開するためには、デベロッパー事業、ASEAN事業、「ローラアシュレイ」や「タルボット」といった専門店事業に力を入れることが求められる。総合スーパーについては、規模を縮小するか、縮小しないのであれば、地域ごとの顧客ニーズを的確につかみ、総合スーパーをリノベーションして中小規模スーパーと専門店の複合施設としたり、あるいは、成城石井のように、高付加価値の商品を展開したりするなど、内容の充実を図っていかなければならない。
要するに求められるのは、画一的な対策ではなく、きめ細やかな地域に即した対応である。さらに、ASEAN事業が好調であることから、27日に発表があった、ベトナムでの食品スーパー「FIVIMART」と、「CITIMART」の2社との、資本・業務提携は、期待できる。海外では経済成長が著しい地域もあることから、海外においては、これまでの総合スーパーのノウハウが十分通用する可能性があるからである。
(ZUU online)
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