フィリピン
(写真=Thinkstock/Getty Images)


はじめに

筆者は、2009年よりフィリピンで生活をしており、出張ベースではあるが、北米、南米、アジア諸国へ赴く機会に恵まれた。基本飛行機は苦手のため長時間のフライトの場合、お酒を飲んで誤魔化しつつ移動するわけだが、やはり最終的には日本でうまい酒を飲みながらのんびり過ごしたいと思い、外国にて永住するという考えは持てない状況にある。

外務省の海外在留邦人数調査統計をみると、フィリピンは、国別永住者数において、2013年は4,864人で国別では11位となっている。また、国別在留邦人数では、同年は17,948人で13位にランク入りした。当地でも、人気の高い永住・在留市場をターゲットとして、ビザ代行業者や住居準備、口座開設サポートなどのサービスを展開している企業は多い。

歴史を紐解けば、1988年通産省(当時)が「ロングステイ」という造語を作り出し、海外居住支援事業を官民一体でプロモーションし、日本人に海外永住という選択があることを認識させた。さらに、昨今では有名企業の社長に倣い、節税対策の一策として海外移住を行う人々も多いようだ。一部報道によると、ニュージーランドや香港など株売却益非課税国への邦人永住者数が1996年から2013年の間に2.6倍に増加したという。

「長期滞在者」といっても様々な目的・背景がある。本稿にてフィリピンのリアルな現状について紹介する。


フィリピン長期滞在者が多い背景

前述したように、国別永住者数・長期滞在者数を見ると、フィリピンはトップ10に次ぐ位置づけとなっている。今回は民間企業の駐在員は対象外として、その他の長期滞在者について考えてみる。

代表的な滞在者として、日本人高齢者を挙げることができる。ロングステイ先としてのフィリピンを考えると、「ケア」が一つのワードとなっている歴史的経緯もある。

2008年発行の日比経済連携協定に基づき、日本政府は、フィリピン人の看護士、介護士候補の受け入れを開始したが、以前として低い合格率(2014年度で看護士は5.6%、介護士は2013年度30.4%)であり、ケアワーカーの国際的獲得の実績は伸びていない。

一方、物価・人件費の割安なフィリピンにてケアサービスを享受できるインフラが整備されていれば、ケアを享受する側が現地に赴き滞在する方法を取ることもできる。1996年日本人経営の外国人介護施設がルソン島ラグナ州で開設されたのをはじめ、類似のサービスを展開している企業は多い。

次に、事業を目的とした長期滞在のケース。フィリピンは日本からも比較的近く、多くの日系企業が進出している。歴史は古いが、90年代ラモス政権期から日系企業に対する誘致活動が活発化し、多くのビジネスマンが海を渡ってフィリピンに長期滞在した経緯より、当地にて商売を開始した日本人がいる。

反対に、フィリピンから日本へ就労のため渡ったフィリピン人と親しくなり、フィリピンに渡り事業を始めた日本人もいる。

最近の傾向として英語が通用する環境を売りにした語学留学や観光、インターンをきっかけに、フィリピンに親しみを覚え長期滞在をされている比較的若年層の日本人がいる。フィリピン国内ではスキューバダイビングやゴルフなどを日本よりは割安に楽しむことができ、現地採用という契約体系であっても、一定の生活レベルを保つことはできる。

また様々な日本人コミュニティーが形成されており、老若男女問わず、現地日本人同士の活発な交流が行われている。

そのほか、NGO活動やボランティアなどの慈善事業が目的の長期滞在者や、国際結婚や親族の兼ね合いで長期滞在している日本人がいる。

フィリピンにおける長期滞在の背景は、昨今話題となっている、節税や資産運用を目的とするようなケースは皆無であり、安価な物価や適度に楽しめるリゾート性、ビジネスにおける親密性から生活のしやすさに起因するもののようだ。


宣伝文句とリスク

フィリピンが、日本人にとって住みやすい環境であるのは事実である。ビザが取得しやすい、物価が安い、親日的など、日本人に限らず一定の所得がある外国人にとって、住みやすい国と言える。

ビザについて言えば、フィリピン入国管理局が発給する特別居住退職者ビザ(Special Resident Retirees Visa、以下SRRV)は、35歳以上の外国人は約5万ドルの預託金をフィリピン国内口座に預けることで保有することができる居住ビザとなる。 永住権、就労権などの特典があり、他国と比較しても好条件のため、多くの外国人が取得し、日本人も毎年100名程が取得している。


柔軟なビザ取得の裏腹に治安が懸念材料

フィリピン国家警察が発表した犯罪統計によれば、2014年の全国犯罪総認知件数は約116万件と前年比で12%も増加した。

殺人や強盗等の重大犯罪は軒並み増加しており、殺人事件は18,268件、傷害事件232,685件、強盗事件は52,798件も発生している。殺人については日本の約15倍以上,強盗事件については約10倍以上の発生件数となっている。 フィリピンの治安に改善の兆しは見られないことから,引き続き十分な注意が必要である。

2014年はフィリピン国内で7人の日本人が殺害されており、多くの日本人が犯罪沙汰に巻き込まれている。依然として危険な国であることに変わりはなく、富裕層とみなされる外国人は恰好の対象となる。

「親日的」というイメージも根強く、英語の能力も相対的に高く、ホスピタリティーに溢れ交流がしやすいという一面がある。

しかし間違ってはいけないのが、良心を持って外国人に接する方もいれば、悪意をもって近づく者もいるという点である。彼らは誰にでも笑顔で接せられる能力に長けているため、「なぜ?」と首を傾げてしまう日本人被害の事件は絶えない。

日本人の外国における未熟性と、フィリピン人の愛想の良さが見事にマッチしてしまい、事件に発展しており、偶発的に発生している事案ではないと思われる。

フィリピンの宣伝文句の裏にはリスクがある。昨今、日本在住者をフィリピンへ誘致しようとプロモーションをかける企業は、フィリピンを過大評価せず、現状に合わせた対応策を顧客に提示することが、最終的に市場の信頼を獲得できるだろう。


最後に

フィリピンにおいて、昨今の住宅建設ラッシュから、外国人が不動産(コンドミニアム)購入を行うことで預金不要でビザが取得できる方法や、不動産営業マンが日本へ赴きプロモーション活動を行っていたりする。

旺盛な資金力を持つ日本人高齢層は、外貨獲得を狙う国にとって魅力的な投資家であり、一方で投資家サイドからみても、フィリピンのような新興国の投資物件をポートフォリオに組み込み、資産運用を検討するという一案もある。

日本においてもフィリピン株や不動産に投資することができるが、やはり投資物件が大きいほど経済動向をリアルに入手できる当地に滞在することが賢明で、日本で高い仲介手数料を負担するよりも、安いコストで運用開始できる利点がある。

「卵は一つのカゴに盛るな」。いかにリスクヘッジ策を練るか。これは投資だけではなく、ライフスタイルにも通じるものと言え、フィリピンでの長期滞在を検討する際は、他のオプションをさらい、なぜフィリピンなのかを再考したほうがよいだろう。


小川晃廣 1981年フィリピン生まれ。中央大学大学院経済学研究科修士課程修了。外資系コンサルティング会社、日系メーカー、総合商社勤務を経て、現在、物流関連の法人設立準備のため、フィリピンに居住。日系調査会社と業務提携を交わし、フィリピンでの市場調査、販路開拓、法人設立サポートも実施。(ZUU online 編集部)

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