成功者のアジア
(画像=Thinkstock/Getty Images)

外務省の海外在留邦人数調査統計をみると、フィリピンは、国別永住者数において、2017年は5423人で国別では7位となっている。また、国別在留邦人数では、同年は16570人で17位にランク入りした。当地でも、人気の高い永住・在留市場をターゲットとして、ビザ代行業者や住居準備、口座開設サポートなどのサービスを展開している企業は多い。

歴史を紐解けば、1988年通産省(当時)が「ロングステイ」という造語を作り出し、海外居住支援事業を官民一体でプロモーションを行って、日本人に海外永住という選択があることを認識させた。さらに、昨今では有名企業の社長に倣い、節税対策の一策として海外移住を行う人々も多いようだ。一部報道によると、ニュージーランドや香港など株売却益非課税国への邦人永住者数が1996年から2013年の間に2.6倍に増加したという。

「長期滞在者」といっても様々な目的・背景がある。本稿にてフィリピンのリアルな現状について紹介する。

目次

  1. フィリピン長期滞在者が多い背景
  2. 宣伝文句とリスク
  3. 柔軟なビザ取得の裏腹に治安が懸念材料
  4. 投資するにしてもまず滞在して現地動向を把握しよう

フィリピン長期滞在者が多い背景

前述したように、国別永住者数・長期滞在者数を見ると、フィリピンは常に上位にあり、特に永住者数では7位と年々増加傾向だ。今回は民間企業の駐在員は対象外として、その他の長期滞在者について考えてみる。

代表的な滞在者として、日本人高齢者を挙げることができる。ロングステイ先としてのフィリピンを考えると、「ケア」が一つのワードとなっている歴史的経緯もある。

2008年発行の日比経済連携協定に基づき、日本政府は、フィリピン人の看護士、介護士候補の受け入れを開始したが、以前として低い合格率(2014年度で看護士は5.6%、介護士は2013年度30.4%)であり、ケアワーカーの国際的獲得の実績は伸びていない。

一方、物価・人件費の割安なフィリピンにてケアサービスを享受できるインフラが整備されていれば、ケアを享受する側が現地に赴き滞在する方法を取ることもできる。1996年日本人経営の外国人介護施設がルソン島ラグナ州で開設されたのをはじめ、類似のサービスを展開している企業は多い。

次に、事業を目的とした長期滞在のケース。フィリピンは日本からも比較的近く、多くの日系企業が進出している。歴史は古いが、90年代ラモス政権期から日系企業に対する誘致活動が活発化し、多くのビジネスマンが海を渡ってフィリピンに長期滞在した経緯より、当地にて商売を開始した日本人も少なくない。

反対に、フィリピンから日本へ就労のため渡ったフィリピン人と親しくなり、フィリピンに渡り事業を始めた日本人もいる。

最近の傾向として英語が通用する環境を売りにした語学留学や観光、インターンをきっかけに、フィリピンに親しみを覚え長期滞在している比較的若年層の日本人が増加した。フィリピン国内では、スキューバダイビングやゴルフなどを日本よりは割安に楽しむことができ、現地採用という契約体系であっても、一定の生活レベルを保つことが可能だ。

また様々な日本人コミュニティーが形成されており、老若男女問わず、現地日本人同士の活発な交流が行われている。そのほか、NGO活動やボランティアなどの慈善事業が目的の長期滞在者や、国際結婚や親族の兼ね合いで長期滞在となるケースも。

フィリピンにおける長期滞在の背景は、昨今話題となっている、節税や資産運用を目的とするようなケースは皆無であり、安価な物価や適度に楽しめるリゾート性、ビジネスにおける親密性から生活のしやすさに起因するものといえる。

宣伝文句とリスク

フィリピンが、日本人にとって住みやすい環境であるのは事実だ。ビザが取得しやすい、物価が安い、親日的など、日本人に限らず一定の所得がある外国人にとって、住みやすい国といえるだろう。

ビザについて言えば、フィリピン入国管理局が発給する特別居住退職者ビザ(Special Resident Retirees Visa、以下SRRV)は、35歳以上の外国人が、約5万ドルの預託金をフィリピン国内口座に預けることで保有することができる居住ビザとなる。永住権、就労権などの特典もついてくるので、他国と比較しても好条件であり、多くの外国人が取得し、日本人も毎年100名程が取得している。

柔軟なビザ取得の裏腹に治安が懸念材料