スマートフォン

2012年ごろに一気に話題になったBYOD(Bring Your Own Device)。従業員が個人で所有しているスマートフォンやタブレットなどのデバイスを、ビジネスに利用する手法だ。これまで多くの企業は、個人デバイスの利用を細かく制限していた。だがスマートフォンの急速な普及にともない、個人所有デバイスをビジネスで利用する状況が拡大している。


表面上導入が進んでいないBYODだが…

2013年度版の総務省が発刊した情報通信白書によると、欧米でのBYODは基幹業務以外ではおよそ半数が認められている。これに対し、日本では業務利用を認めているのは10%台前半である。つまり日本では、表面上はBYODが認められてはいない。したがって他の民間の調査機関でも、直近では積極的に調査を行っていないのが実情だ。

一方で、IT調査会社IDCジャパンが2013年に行った調査では、2年前の段階でBYODが社内的には利用されているが規定では認めていない、いわゆるシャドーITと呼ばれるケースが、スマートフォンでは実に6割から8割におよんでおり、2016年には1265万人規模へと拡大すると予想している。


USBの口だけ封印するのは時代遅れ?

モバイルデバイスの調査を行っているMMD研究所によると、次のようなケースが増えているという。まず、会社のメールを自分のデバイスに転送して読むケースは、2013年段階ですでに38%弱。社員同士や取引先とのコミュニケーションに個人メールを利用するケースも頻発しており、8割以上のユーザーが利用経験を持っている。最近では米国のヒラリー・クリントンの個人アドレス利用が問題となったが、もはやこれはスタンダードな状況といえる。

EvernoteやiCloudを利用して提案書、企画書などのビジネス文書を自宅で閲覧したりチーム内でシェアするケースも増えており、2013年段階でもすでに25%弱が利用経験を持っているという。つまりPCのUSBの口だけ封印しても、データはあらゆる方法で社外に出ていくことになる。

さらに驚くのはスマホに搭載されているカメラの利用だ。高精細のカメラを利用してホワイトボードや紙の資料を撮影し、閲覧している社員は3割を超えるという。おそらく同様の調査をして、回答者が本当に正確に回答してくれたら、利用率はもっと高くなるに違いない。


SNSの利用はもはや止められない

ここ2年ほどで急激に利用率が高まっているのがLINEだ。LINEは無料で音声のやりとりができるだけでなく、電話の代わりにパケット通信のコミュニケーションもできる。当然ファイルやアドレスも添付することが可能で、情報は出し放題となる。しかもLINEは、正確には電気通信事業ではないので、セキュリティの問題やLINE自身がこうしたデータの二次利用をどこまで責任をもって制限しているのか、はなはだ疑わしい。利用者からみれば無償だが、ビジネスに利用し、みんなでファイルをシェアして本当に大丈夫なのか?という問題はいずれ大きなトラブルが発生することで一気に顕在化するのではないだろうか。

ツイッターを利用して重要な情報をダイレクトメッセージで送ったはずなのに、フォロワーに公表されてしまったという間抜けな失敗も、すでに続出している。間違えたつもりはないので放置時間も長く、リツイートされてしまえば、元のツイートを消しても万事休すという事態がすでに現実のものとなっているのだ。SNSの影響は、すでにリアルの市場に及んでいる。


起こりうるリスクを徹底して従業員に伝えよ

BYODは、個人利用の端末をビジネス用にも使えるようにする、そう定義されてきた。しかし、いまや個人は自分の端末でパーソナルからビジネスまで使いこなしている実態が浮き彫りになった。セキュリティのあり方も、サーバーやIDとパスワードの管理などでは防げないところまできている。

個人デバイスによる、さまざまなコミュニケーション手法の拡大は、もはや止められない。数年前に新聞社が自社の記者にツイッターの利用を禁止したことがあったが、今ではそうしたナンセンスな禁止令も出なくなった。逆にどこまでが許され、何をしてはいけないのか、それを徹底することが重要な時期にさしかかっているといえよう。利用方法と結果だけに注目していると、その間のプロセスにどのようなリスクがあるか判断がつかない。

とくにBYODの利用では、いくら万全のレギュレーションを設定しても、必ず抜け道が出てくる。スマホを使ってやっていいこと、いけないことをより明確に可視化して、利用者が誤用しないようにすることしか、最善の解決策はない。このあたりをいかに社員に明確に提示し、正しい判断力を高めることができるか否か。それが、今後の企業における個人デバイス利用の大きなポイントとなりそうだ。(ZUU online 編集部)

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