自社株買いでEPSを拡大
ここで株主還元の方法についておさらいしておこう。企業の株主還元策は大きく分けて3種類ある。第1が配当である。配当は一般的に年1回、現金で支払われるが、なかには年2回、あるいは年4回配当を実施する企業もある。当期純利益のうち何%を配当に回したかを示す配当性向は、日本企業では30%程度が一般的だ。日本企業の配当性向はここ数年上昇基調にあり、株主の力が強い米国の水準にほぼ並ぶところまできている。
2つ目の株主還元策が自社株買いである。自社株買いとは文字通り会社が自社の株式を市場で買い付けること。その目的は、ストックオプション用株式の確保や敵対的買収の防止などいくつかあるが、最近特に増えているのが、株主への利益還元としての自社株買いである。
自社株を買い付け、消却することによって企業の発行済株式数は減少し、同時にEPS(1株当たり純利益)やBPS(1株当たり純資産)は増大する。当期純利益は基本的に株主に帰属するものであるから、EPSが増大すれば、その増加分は株主に利益を還元したことと同じ意味を持つことになるわけだ。
また自社株買いはROE(自己資本利益率)の向上、つまり、より少ない資本でより多くの利益をあげるという企業本来の目的にも叶っている。現金や金券でないぶん、注目されにくい自社株買いだが、企業の資本政策において重要な役割を持つ施策であるから、株式投資に際しては十分な注意を払っておきたい。