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本稿では、ジャパンディスプレイと並んで大型上場として話題になっている日立マクセル株式会社の銘柄分析を行います。

分析結果は、

・事業分野が多岐にわたり、多くの技術を持っている

・現時点の財務は安定的である

・為替レートの影響を受けやすい可能性がある

・想定株価は適正である

です。この事から、

想定株価には割安感は無く、為替レートの変化によっては寧ろ値下がりする事があるかもしれませんが、様々な技術を持っているという点に関しては夢のある銘柄であると結論づけられます。

この根拠などを含め、以下に、詳説していきたいと思います。


◉再上場、日立マクセル株式会社とは?

日立マクセル株式会社は、日立製作所を親会社とし、「エネルギー事業」・「産業用部材料事業」・「電器・コンシューマー事業」を行う企業です。元々は東証一部に上場していましたが、2010年3月に日立製作所の完全子会社になり、2012年4月に主要関連子会社5社との統合などを経て、2014年3月に日立製作所が保有する株式約5242.6万株のうち、再び東証に上場して約2832.7万株を売り出すことになっています。(海外市場で更に690万株を売り出す予定になっています。)想定株価は2070円で、調達額は約729.2億円になると予想されています。

図1は、日立マクセルの事業系統図です。

日立マクセル1

図1:日立マクセルの事業系統図

出典:日立マクセル株式会社有価証券届出書

同社が定める各事業分野における主要製品には、以下のようなものがあります。

・エネルギー事業:リチウムイオン電池(二次電池)、一次電池

・産業用部材料事業:光学部品(カメラレンズ等)、粘着テープ、磁気テープ、精密機器(ICカード等)

・電器・コンシューマー事業:プロジェクター、ヘルスケア・理美容品、記録メディア、音響機器、充電危機、乾電池

セグメント別売上高と比率は下図2のようになっており、特定のセグメントに極端に偏らない売上構成になっています。

日立マクセル2

図2:日立マクセルのセグメント別売上高比率

出典:日立マクセル株式会社有価証券届出書


◉日立マクセルの業界内での動向

同社は、ユニーク・ニッチ・トップを押す傾向があり、リチウムイオン電池、産業用テープやプロジェクターなどで高いシェアを持っています。とは言え、これら3製品で日立マクセルの売上高の4割程度であり、極めて多彩な製品分野で事業を展開しており、特定の市場を取り上げて「この分野の成長によって企業全体が成長する」と予測する事には向かないと思われます。

とは言え、産業用テープといった高いシェアを持つ製品や、リチウムイオン電池といった成長性が高く技術力が求められる製品の技術を高く評価して投資するという方向性は考えられるでしょう。

日立マクセルがその成長性を強調するものがリチウムイオン電池です。特に、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載するリチウムイオン電池が成長する事が見込まれており、2015年には1000億円の売上が目標になっています。(日立製作所, 2009)

他にも様々な成長性のある製品分野があると思われますが、あまりに多岐に渡るので、ここでは取り上げません。(正確には、個別技術や市場を全て評価する能力を持ちません。)以前上場していた時までの有価証券報告書や各種レポート等が充実しているので、それらを参照すると良いでしょう。(リチウムイオン電池については、参考文献が網羅的だと思います。)