■子供達自身の意思はどうなのか?
代々の経営者一族の子供達は、幼少期に親から職場を見せてもらったり、信頼の重要性などの話を聴いたりしているうちに、高学歴を目指すようになることも多いようです。
「僕は、父から園芸の話をよく聴いており、しょっちゅう会社や会社のビニールハウスなんかに連れて行ってもらいました。 そういったことが好きでも、嫌いでもなかったのですが、気がつけば、恥ずかしくない成績はとっておこう、そして農業大学に行こう、と思うようになっていました。」(園芸会社4代目の若手社長)
このように、職場に連れて行かれたりなど、ゆくゆくは跡を継ぐことになることを自覚させされ、かつ信用の重要性を説かれていったことで、ある程度の成績をキープしないと恥ずかしい、と考えるようになったのです。
●外での就職
「高校・大学に行って知識をイッパイ溜めれば、就職が有利になるんでしょうが、そんな社員や社長じゃ、ウチは生き延びれないからね。 だから、高校も大学も行きたいなら行けっ、って感じでしたね。 息子も就職したけど、40近くで辞めて、ウチを継ぎました。 就職したことが良い経験になったようで、今では色々と頑張ってくれてます。」(ディスカウントショップ2代目社長で現在は御子息に譲り、引退。)
「とにかく、信頼信頼って、本当にうるさかったですね(笑)。 僕は法学部に入ってて、弁護士になりたかったし、跡を継ぐ気もなかったのですが、勉強しているときも、『信頼』って言葉に押されて、頑張ろうって気になりましたね。 弁護士事務所に事務員として就職したのですが、子供の時にやらされていたケーキ作りをだんだんやりたくなって、故郷に帰ることにしました。 今が一番充実してます。」(ケーキ店3代目の若手社長)
経営者としての教育の一環として、一度は外での就職を容認されることもあるようです。
●実を結ぶ「信頼」教育
この記事を書くために、知り合いの経営者の方々30社近くに、電話とメールでの取材をさせていただきましたが、2社を除き、全ての会社は存続しており、その半数以上は、御子息がすでに跡を継がれていることも判りました。
前述のように、日本国内には、約19,500社もの創業100年以上の会社があります。その一方で、「国税庁統計に基づくといわれるネット上の情報」によると、設立後30年続く会社は0.025%、つまり1万社のうちの25社しか生き残れない、という説があります。この数字の正確さはともかくとして、経営を続けていくのはとても厳しい一方で、生き残る会社は、力強く生き残っている、ということですね。
その中で、生き残るための力強さを持っている「跡継ぎ」でなければ、おそらく私が取材した会社の大半は存続していないはずです。跡継ぎとなる子供達に対する、「信頼」を軸にした教育が、実を結んだ理由の一つだと考えます。
「(同じお菓子でも、)ウチのお菓子のほうが、家庭訪問にきた担任の先生が喜ばれる。 これが信頼だとおもってます。」信頼関係を維持するために、子供を教育し、技術や知識を引き継がせる。 それが生き残るためのカギの1つであろうと考えられます。
最後に、今回、お忙しい中、私の連絡に応じていただいた方々に、ここに感謝の意を表したいと思います。
BY
飯川慶:日本とアメリカで育ち、アメリ
カの大学を卒業したあとは、メキシコを放浪し、その後、日本に帰国。 そのあとは、香
港の航空会社の客室乗務員になる。
27歳のときに客室乗務員を辞めて、英会話教室を始め、現在に至る。