7〜9月も現状維持か

今回の会合では「わが国の景気は緩やかな回復を続けている」という景況判断は維持した。また、経済の先行きに関しても、「緩やかな回復を続けていくと見られる」と前回から変更はなかった。4月以降の賃金上昇の影響が強くなり、原油価格下落の影響が剥落していく7-9月期以降は物価上昇率も持ち直すとみられ、日銀は辛抱強くそれを確認しようとするだろう。7、8、9月も現状維持になると予想する。

しかし、10月には物価上昇率の持ち直しが、「2%の物価安定の目標」を「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」には弱すぎることを確認し、追加金融緩和が実施されると考える。日銀が重要視している短観の企業の期待インフレ率が、10月1日公表の9月調査で低下が確認されるかが鍵を握るかもしれない。

昨年12月の衆議院選挙、今年4月の統一地方選挙、そして9月の自民党総裁選挙までの選挙期間中は、円安で負の影響を受ける人々(消費者、非製造業、中小企業、地方など)への配慮から、安倍首相も大きな円安につながる可能性のある追加金融緩和をそれほど望まないと考えられる。

しかしそれ以降は、デフレ完全脱却の実感につながる株式市場の更なる上昇のためにも、日銀の追加金融緩和を望むように変化してくると考えられる。来年夏の参議院選挙までにはデフレ完全脱却を宣言し、その成果を国民にアピールすることで勝利したいと考えるだろう。

10月に見直される展望レポートでは、2016年度の物価上昇率の予想は+2%程度から大きく下方修正され、早期の2%の到達が困難であることを正式に表明するだろう。

そして、目標の達成時期を「2015年度を中心とする期間」の範囲内である「2016年度前半頃」から、2017年度の前半も視野に入れた「2016年度を中心とする期間」へ正式に後ずれさせ、その実現をより確かにするための追加金融緩和という位置づけを明確にするだろう。

マネタリーベースを「年間約80兆円」から「年間約85兆円」へ増加させ、その増加分の過半はETFを含めたリスク資産の買い入れでなされ、量より質の面の緩和を強調するだろう。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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