中国のAIIBの動きに恐れ?
また、別の見方として、中国への懸念が背景にある。中国がAIIB(アジアインフラ投資銀行)の設立で金融ルールを主導していこうとする動きがあり、通商分野で中国に先駆けてルール作りに参加する必要があるという考えだ。
TPPに関わる具体的な論点としては、主に自動車、農産物、知財関連分野がある。公的医療保険、医薬品、食品安全なども候補として上がっているが、公的医療保険については、WTOサービス協定の対象外であり、米国も事前協議において、TPPでは取り上げないことを表明している。医薬品や食品安全の基準は、たとえ一定の基準を作るとしても、厳しい基準を設けることは排除されないと考えられる。
自動車の関税維持と知財関連分野の強化はアメリカが主張、農産物の関税維持は日本が主張している。現在、アメリカでは、乗用車に2.5%、商用車に25%の輸入関税を掛けており、これがなくなれば、日本にとっては有利になる。
しかし、アメリカの自動車業界は猛烈に反対しているので、交渉が難航することが予想される。農産物については、日本は、農家保護と自給率維持のため、多くの農産物に高い関税をかけている。こちらも妥結は難しいと思われる。
TPPの大目的「例外なき関税の撤廃」
TPPの大きな目的の1つは「例外なき関税の撤廃」である。そこで、アメリカが自動車の関税の維持を主張するのであれば、日本は引き換えに、農産物の関税の維持も主張できる。しかし、アメリカが自動車の関税を撤廃するとなれば、農産物だけ関税を維持するというのは難しくなるはずだ。
知財関連についても、日本の文化に大きな影響を与える可能性がある。具体的には、著作権保護期間の延長、著作権侵害の非親告罪化、著作権侵害に対する法廷賠償金などがある。特に著作権侵害の非親告罪化は、表現行為に対する萎縮効果をもたらす可能性があるので、非常に慎重に対応すべきである。
また、米国流の違約的賠償金も日本の司法制度にはなじみがないので、導入は難しいだろう。だが、あくまでも交渉なので、一定の例外を認めて妥協点を見つけていくしかない。
日本は今後、少子高齢化により人口が減少していく。つまり、市場が減少していく。国内市場が減少する中で、今後も経済成長をするためには、成長している諸外国を相手に貿易をするしかない。
そう考えると、TPPは日本にとって脅威ではなく、救世主になるのかもしれない。だが、妥結までには、かなりタフな交渉が求められるはずだ。日本の将来に大きな影響を与える内容だけに、甘利大臣を始め関係閣僚の交渉力に期待したい。(ZUU online 編集部)
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