日本の内需低迷・デフレの長期化は、恒常的なプラスとなっている企業貯蓄率(デレバレッジ)に対して、マイナス(赤字)である財政収支が相殺している程度(成長を強く追及せず、安定だけを目指す政策)であり、企業貯蓄率と財政収支の和(ネットの国内資金需要、トータルレバレッジ)がゼロと、国内の資金需要・総需要を生み出す力が喪失していたことが原因である。
企業貯蓄率と財政収支の和であるネットの国内資金需要(マイナスは借入で拡大、プラスは返済で縮小)は、企業と政府が支出する力を意味する。ネットの国内資金需要が消滅していたことは、企業の恒常的なデレバレッジ(異常なプラスの企業貯蓄率の恒常化)が、家計から企業への富の移転(総賃金の縮小)の原因となっていたことを意味する。そして、政府の支出が十分ではなく、その富の移転をオフセットしきれていなかったことも意味する。
家計のファンダメンタルズの悪化が、消費者心理を悪化させ、内需の低迷が恒常化し、それが企業活動を更に停滞させるという悪循環に陥っていた。アベノミクスなどによる企業活動の回復と財政支出により、ネットの国内資金需要、すなわち企業と政府が支出する力が復活した。企業と政府が支出した資金は総賃金の拡大をもたらし、富の移転は企業から家計へ逆転し、内需の拡大を支えている。
この富の移転の方向性は、ネットの国内資金需要と家計の貯蓄率にきれいな逆相関の関係があることで確認できる。
ネットの国内資金需要が縮小(企業と政府の支出する力が弱くなる)・家計貯蓄率低下という形から、ネットの国内資金需要が拡大(企業と政府の支出する力が強くなる)・家計貯蓄率上昇へ変化し、家計のファンダメンタルが修復してきた。
会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト
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