製造業の業況判断は足元、先行きともに悪化
製造業の業況判断DIは、全9地域中3地域(北海道、中国、九州・沖縄)で前回調査から改善する一方、5地域(東北、北陸、東海、近畿、四国)で悪化した(横ばいは関東甲信越)。中国、新興国を中心に輸出が伸び悩んでいることや国内需要の弱さを主因とした在庫調整圧力の残存などが、引き続き製造業の景況感にとって足かせとなったようだ。
自動車販売の回復の遅れが目立つ輸送用機械や在庫調整圧力の高い鉄鋼などで景況感の悪化が示されたほか、木材・木製品では住宅市場の低迷や円安に伴う輸入物価の上昇が下押し要因となった。一方、円安を主因とする値上げによって収益改善が奏功した食料品は、多くの地域で改善に転じている。
前回調査からの改善幅は、北海道(+7ポイント)が最も大きく、次いで中国(+3ポイント)、九州・沖縄(+2ポイント)と続いている。北海道では、電気機械(+22ポイント)、食料品(+11ポイント)が大幅に改善したほか、金属製品(+40ポイント)がプラスに転じたことが製造業の景況感押し上げに寄与した。
一方、中国では、自動車販売の不振などを受け鉄鋼(▲22ポイント)が大幅悪化となる一方、食料品(+17ポイント)が大幅に改善したほか、設備投資の回復基調を反映しはん用・生産用・業務用機械(+19)は高水準を維持している。
前回調査からの悪化幅は、東北、北陸(▲3ポイント)が最も大きかった。東北では、円安による原材料高が重石となった紙・パルプ(▲25ポイント)、繊維(▲13ポイント)が製造業の景況感を押し下げた。北陸では、はん用・生産用・業務用機械(+13ポイント)が景況感の押し上げ要因となる一方で、木材・木製品(▲40ポイント)、輸送用機械(▲16ポイント)などが悪化した。
先行きについては、4地域(北海道、東海、中国、九州・沖縄)で今回調査から悪化するなど、慎重な内容となっている。業種別では、海外景気の先行き不透明感、それに伴う在庫調整の遅れなどから輸送用機械、電気機械などを中心に悪化が見込まれる。
日銀短観6月調査では、2015年度想定為替レートが115.62円と3月調査(111.81円)から円安に修正されているが、円安効果を加味しても製造業の景況感は改善していない。紙・パルプ、繊維などでは引続き円安による景況感の下押しが続くとみられる。