経済成長率
(写真=Thinkstock/Getty Images)

経済財政運営と改革の基本方針2015では、これまでの名目GDP成長率=前提・プライマリーバランス黒字化(財政健全化)=主目標から、名目GDP成長率(デフレ完全脱却・経済再生)=主目標・プライマリーバランス黒字化=副次的目標へ、政策哲学は大きな転換をしたと考えられる。

「名目3%程度を上回る成長(デフレ完全脱却・経済再生)の実現を目指す」ことが政策目標として主目的となり、プライマリーバランスの黒字化は副次的なものとなった。成長率の目標を達成することと整合的な歳出の目安をつくり、プライマリーバランスの黒字化を副次的に達成するという形になるのが自然で、歳出抑制が目標ではなく目安になったのは当然だろう。

さらに、税収の弾性値自体がデフレ完全脱却と経済再生により可変であると考えるのが自然で、5年程度の短い期間の計画にもかかわらず、これまで長期的な平均である1程度として前提を置いていたことが非現実的であった。

控えめな経済成長率と税収弾性値の前提を置き、2020年度のプライマリーバランス黒字化を達成するためには、大きな歳出削減や増税が必要であると試算し、歳出削減策と増税策が進められ、経済成長率が犠牲となるこれまでの政策の形は否定された。主目的である名目成長率が3%を下回った場合は、副次的であるプライマリーバランスの黒字化が若干遅れるのは当然であるというスタンスになったと考えられる。

新たな計画には「歳出、歳入の追加措置を検討」とあるが、これは経済成長率が弱いことが理由で遅れているプライマリーバランス黒字化を、歳出削減策と増税策で強引に達成するためのものではない。2017年4月の消費税率の再引き上げは計画に既に織り込まれている。

「歳出、歳入の追加措置を検討」に関して、「デフレ脱却・経済再生を堅持する中で」という条件がついているからだ。デフレ完全脱却が主目的である以上、副次的である2020年度のプライマリーバランスの黒字化は、成長率が押し上がった結果として実現する必要があるというのが、新たな計画の方針である。

主目的である名目成長率が3%を下回っているにもかかわらず、2020年度のプライマリーバランスが黒字化する可能性が出てきた場合は、財政緊縮が過度であり、「歳出、歳入の追加措置」は経済を更に刺激し、成長率を押し上げるための歳出増加策と減税策になると考えられる。

政策哲学が大きな転換をしたため、主目的である名目成長率が3%を下回っても2020年度のプライマリーバランスが黒字化するというシナリオは否定されている。よって、名目GDP成長率を目標ではなく前提として扱い、その高低だけを議論することはもはや適切ではない。

新たな計画で、経済成長率を押し下げるリスクとなるような「歳出、歳入の追加措置」による歳出削減策と増税策は封じ込まれたことになり、財政緊縮が景気拡大の妨げとなるリスクが減じ、デフレ完全脱却・経済再生の可能性は高まったと考える。

歳出削減策と増税策による財政緊縮は、財政が安定化したという「安心効果」により、企業の投資と家計の消費を刺激し、経済成長率を押し上げるという理論は、拙速な消費税率の引き上げ後の弱い経済の動きが確認され、もはや使えなくなってしまった。

主目的である名目成長率が3%を大きく上回っても、税収の増加が小さく2020年度のプライマリーバランスの黒字化が見えなかったときのみ、「歳出、歳入の追加措置を検討」は歳出削減策と増税策となる。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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