◉日本リート投資法人の財務の安定性

財務の健全性を測る為に、当座比率・キャッシュフロー・LTVを見てみましょう。


【当座比率】

当座比率は、 当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100 で計算出来ます。

図6は、日本リート投資法人の貸借対照表です。

日本リート投資法人 財務1

日本リート投資法人 財務2

図6:日本リート投資法人の貸借対照表 出典:同上

資産の部より、特に現金化しやすい当座資産は、ここでは資産の部より「現金及び預金」と「営業未収入金(不動産業以外の多くの企業における売掛金に該当)」です。負債の部より流動負債を抽出し、当座比率を計算したものが下図7です。

日本リート投資法人

図7:日本リート投資法人の当座比率 出典:筆者作成 注:単位は千円

図を見て分かるように、2期連続で当座比率が100%を超えており、少なくとも短期的には財務は安定的である事が分かります。


【キャッシュフロー】

次に、図8のキャッシュフロー計算書を見てみましょう。

日本リート投資法人 キャッシュ・フロー

図8:日本リート投資法人のキャッシュフロー計算書 出典:日本リート投資法人有価証券届出書

これを元にキャッシュフローをまとめたものが図9です。

日本リート投資法人 キャッシュ・フローまとめ

図9:日本リート投資法人のキャッシュフロー 出典:図8より筆者作成

営業キャッシュフローはプラスで推移しており、本業が好調である事はわかりますが、その額は小さくなっています。投資キャッシュフローはプラスに転じており、その主因は信託預り敷金及び保証金の受け入れです。上場による新株発行も相まって、これから投資を拡大していく準備が出来上がっていると考えて良いでしょう。また、財務キャッシュフローはマイナスであり、安定して債務を償還しており、前節と比較しても、この点は問題無いでしょう。

総じてフリーキャッシュフロー(営業CF+投資CF)は目減りしていますが、これから資金調達して事業を拡大する中でフリーキャッシュフローを確保していく予定なのだと考えられます。


【LTV】

LTV (Loan to Value)は、投資法人がどのような運用姿勢を持っているかを測る指標です。その計算方法に統一的なものはありませんが、概ね LTV = (有利子負債 + 保証金等) ÷ 運用不動産 で計算する事が多いです。平成25年6月期のLTVを計算してみましょう。

有利子負債は、「1年内返済予定の長期借入金」と「長期借入金」であると考えられ、合計で18386880千円です。保証金等は「信託預り敷金及び保証金」(384922千円)が該当します。

運用不動産は、概ね固定資産のうち有形固定資産が該当すると考えられ、16653734千円です。

LTVを計算すると、112.71%となります。これ自体は極めて高い数値で、ハイリスク・ハイリターンの投資姿勢であると解釈出来ます。但し、J-REITでは70%以内にLTVを抑える事が推奨されるので、上場による資金調達によって不動産を多く取得する事で健全な数値に抑える事が予想されます。この意味で、上場後にどの程度不動産を取得するかを注視していく必要があります。