本稿では、2014年4月24日に東証に上場が予定されているREITである日本リート投資法人を投資対象として評価してみましょう。
REIT(リート)も金融商品ですので、基本的には株式を評価する際の手法を応用出来るのですが、その収益源が不動産であるが故、 ジャパンディスプレイ や 日立マクセル で行った方法をそのまま適用する事には問題がある事があります。
そこで本稿では、基本的には「市場動向」・「財務の安定性」・「収益性」・「株価水準」を踏まえた評価手法を踏襲しつつも、使う指標を変更及び追加し、
【市場動向】
・保有不動産関連市場の動向
【財務の安定性】
・当座比率
・キャッシュフロー
・LTV
【収益性】
・売上高営業利益率
・総資産利益率(ROA)
【株価水準】
・予想PBR
から銘柄の評価を行います。結論を先取りすると、安定した利益があげられる可能性がある銘柄ですが、日本経済との連動性が高くなる可能性があり、インデックスファンド等と比して魅力的な銘柄であるとは言い難いというのが結論です。では、具体的に見ていきたいと思います。
参考: 今年2件目のIPO!双日の日本リート投資法人(3296)、東証上場へ|不動産online
◉日本リート投資法人の市場動向を解説
日本リート投資法人は、双日リートアドバイザーズ株式会社(双日67%出資子会社)が資産運用を行う投資法人です。自らを「総合型の不動産投資法人」であると位置づけ、ポートフォリオの構築基準として以下の3つを定めています。
- 成長性及び安定性を重視したポートフォリオの構築
- 用途分散
- 地域分散
これは、都心6区のオフィスを中心としつつも、経済動向やリスク環境を見つつ、三大都市圏や政令指定都市の不動産もポートフォリオに組み込み、オフィスだけでなく住宅や商業施設を組み込むということです。図1の用途別投資比率、図2の地域別投資比率を見れば、概ねその意図は分かるでしょう。
図1:日本リート投資法人の用途別投資比率 出典:日本リート投資法人有価証券届出書
図2:日本リート投資法人の地域別投資比率 出典:日本リート投資法人有価証券届出書
具体的にどのような不動産を保有し、また今後取得していくかは有価証券届出書を参照していただきたいと思いますが、全体としてポートフォリオ構築基準に則り「収益性」と「安定性」を意識したポートフォリオになっていると思われます。
図3の都心5区のオフィス需要と賃料変動率共に回復傾向にあり、その点で高い収益性を目指したものになっていると言えます。また、ここでは示しませんが、主要都市のオフィスビルの空室率も低下傾向にあり、全体的にオフィス需要が上向きです。
図3:都心5区のオフィス需要と賃料対前四半期変動率推移 出典:日本リート投資法人有価証券届出書
また、安定性を考慮する為に住宅もポートフォリオが組み込まれています。図4を見て分かるように、住宅は他の施設と比較して賃料水準が安定的であり、ポートフォリオをハイリスクに触れさせない事が考慮されています。
図4:用途別賃料指数の推移 出典:同上
商業施設に関しては、消費動向が回復傾向がある事を理由にポートフォリオに組み込まれています。図4は消費総合指数を示しており、回復傾向にある事が分かります。日本リート投資法人は、安定的に確保出来る20000㎡以下のショッピングセンター等を中心に運用・取得していくようです。
図5:消費総合指数の推移 出典:同上
ポートフォリオを多用途・他地域に分散するだけでなく、特定の不動産に投資額が集中し過ぎないように制限を持たせ、全体として経済成長に乗って安定的に収益を確保出来るようなポートフォリオになっている事が特徴的でしょう。