◉日本リート投資法人の収益性を分析

収益性に関しては、売上高営業利益率と総資産営業利益率(ROA)を見てみましょう。下図10は損益計算書、下図11は日本リート投資法人の売上高営業利益率と総資産営業利益率(ROA)をJ-REIT平均(2012年)と比較したものです。

日本リート投資法人 損益計算書

図10:日本リート投資法人の損益計算書 出典:日本リート投資法人有価証券届出書

日本リート投資法人 損益計算書まとめ

図11:日本リート投資法人の収益性 出典:日本リート投資法人の収益性は「日本リート投資法人有価証券届出書」より筆者が計算した。J-REIT平均の数値は都市未来総合研究所編(2012)を利用した。

他のJ-REITと比較して高く利益が出ているわけがありませんが、その意味では「収益性」と「安定性」のバランスが取れた投資商品になる可能性があると言えるでしょう。


◉今回のIPOの株価水準を予想する

株価水準を見る上で、予想PBRを計算してみましょう。


【予想PBR】

PBRを計算してみましょう。但し、上場前なので株価を「想定株価」で計算した予想PBRを計算し、想定価格の水準を評価してみましょう。 なお、日本リート投資法人は144,200口を発行し、発行価額の総額を360.5億円としていますので、想定株価は250,000円となります。

会社の純資産は「会社解散時に株主が回収可能な資産」であるので、PBRは「株価が解散価値の何倍か」を意味し、以下のように計算出来ます。

PBR = 株価 ÷ 一株当たり純資産(BPS)

純資産は、資産の部の130501千円に加え、想定価格による純資産の増加分36050000千円を含めるので、36180501千円となります。

PBR = 250000 ÷ (36180501000 ÷ 144200) ≒ 0.997倍 です。PBRが殆ど1であるので、想定株価が解散価値とほぼ等しいという事を意味し、その意味では妥当な価格と言えるでしょう。

なお、本来はPERやROEを計算すべきですが、今期の業績予想が出ておらず、前年度の利益から出してもあまり意味のある数値は出ません。同様に、REITではFFOやNAVを計算するべきだと思いますが、これも当期利益予想が出ない段階では、あまり意味はありません。


◉日本リート投資法人の投資対象としての評価

全体を総括すると、


・不動産市場が安定して回復傾向にある


・日本リート投資法人は収益性と安定性のバランスが取れた銘柄である


・短期的には財務は健全であると言える


・収益性は他のREITと比較して高くないが、リスク面を考慮すればローリスクローリターンの投資対象である


・想定株価は妥当な水準である

と言えます。

地域分散・用途分散というリスクヘッジを強く意識した日本リート投資法人は、日本経済が順調に回復していけば、それに伴って安定して成長していく銘柄である可能性は高いと思います。一方で、日本経済と高く連動する可能性が高い銘柄と考えれば、TOPIX連動ETFやREIT指数連動ETF等と高く相関する可能性が高い銘柄であるとも考えられます。投資対象として悪くない選択肢だとは思いますが、筆者としてはインデックスファンドなどと比べた場合、それを上回る大きなメリットがあるようには見えません。

以上、日本リート投資法人に関する考察でした。あくまでも一意見として参考にして頂ければと存じます。

参考: 今年2件目のIPO!双日の日本リート投資法人(3296)、東証上場へ|不動産online

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参考文献

[1] 日本リート投資法人有価証券届出書( EDINET で検索すると参照出来ます。)

[2] 都市未来総合研究所編(2012)『不動産レポート2012 特集編』


BY たけやん:経済学修士号取得後、株価推定事業・研究を行っている