参議院本会議が6月17日、改正電気事業法案を賛成多数で可決した。安定供給義務の履行と引き換えに許されていた大手電力会社の独占的な供給市場への、新規参入を促す狙いを持つ法案だ。同法施行による市場構造の変化を見込み、さまざまな新サービスも足元で登場してきている様子だ。

参院で可決された改正電気事業法の中心がいわゆる「発送電の分離」だ。具体的には、大手電力会社の発電と送配電部門を分社化が実現されることになるもので、5年後に施行となる見通しだ。

電力市場については、一般家庭に電気を販売する電力小売も16年に自由化されることがすでに決まっており、先立つ今回の電事法改正で、不透明だった送配電網の利用条件が明確化される予定。その結果、新規参入の企業でも送配電網を大手電力会社と同じ条件で公平に利用できるようになると見込まれているのだ。

電力市場の自由化に伴う市場の構造変化を見据え、現在、多種多様な企業の電力市場参入が相次いでいる。6月10日時点に経済産業省へ届け出があった特定規模電気事業者(PPS)は673社。その内、6月末までに事業を開始している会社が475社あり、2014年の実に2倍にまで増加している。


新規参入事業者に商機を見出すIT大手

機を見るに敏だったのは富士通 <6702> だ。改正電事法成立日でもある6月17日に、同社は北海道ガス <9534> に納入する、電力料金計算システムの開発・導入を受注。北海道ガスも2016年4月の電力小売事業参入を目指しており、電源の確保や電力事業を効率的に運営するためのITシステムの整備を進めている。

その一環として電力販売において中核となる電力料金計算システムにBRMS(業務上の規則、条件、判断基準などのビジネスルールを定義し、複雑な業務判断を自動的に実行、管理するためのシステム)技術を用いた料金計算機能を採用。簡単な登録処理により、料金メニューの追加や改定といった設定変更が可能となる。

また、都市ガス販売用の既存の基幹システムとの連携により、ガスと電気を組み合わせて各家庭に合った料金プランの提案を行うなど、高付加価値のさまざまなサービスの提供を目指す。