金融市場(7月)の動きと当面の予想

◆10年国債利回り

◇7月の動き 月初0.4%台後半からスタートし、月末は0.4%台前半に。

月初、流動的なギリシャ情勢を受けた買い控えから長期金利が上昇し、7日に0.5%台に乗せる。しかし、その後は弱めの米雇用統計、ギリシャ情勢の緊迫化、中国株の急落などを受けて低下基調となり、8日には0.4%台前半を付ける。以降しばらく0.4%台半ばでの一進一退が続いたが、日銀買入れオペによる需給逼迫観測により17日には0.4%台前半へと低下。その後も中国株や商品価格の下落などから金利は低迷し、月末も0.4%台前半で終了した。

◇当面の予想

今月に入り、原油価格下落などから一旦0.4%を割り込んだ後、足元は0.4%台前半にある。今後も日銀の国債買入れが継続される中で大幅な金利上昇は見込みがたく、基本的にはボックス圏での動きが予想される。ただし、FRBが年内の利上げを模索する中で、当面は9月利上げ観測が台頭しやすい地合いが見込まれる。このことから、米長期金利上昇を通じて本邦長期金利も0.5%程度に若干水準を切り上げる可能性が高いと見ている。

日米欧長期金利の推移

◆ドル円レート

◇7月の動き 月初122円台後半からスタートし、月末は124円に。

月初、米雇用統計への期待が高まり、123円台前半へと水準を切り上げたが、ギリシャ国民投票での緊縮策否決を受けたリスク回避の円高で6日には122円台後半へ。さらに、中国株の急落を受けてリスク回避地合いが強まったことで、9日には120円台まで円高が進行した。

その後は、ギリシャ支援の合意や中国株の持ち直しにより円売りが優勢となり、14日には123円台後半まで値を回復。さらにイエレンFRB議長の議会証言が思ったほどハト派的ではなかったことで利上げ観測が高まり、17日には124円台に乗せる。以降は中国株などを材料に一進一退の推移が続き、月末も124円で着地した。

◇当面の予想

今月に入り、アトランタ連銀総裁による9月の利上げ示唆、ISM非製造業指数の大幅な改善を受けて9月利上げ観測が高まり、足元は124円台後半で推移。

目先のカギはやはり本日の米雇用統計となる。「非農業部門雇用者数20万人強増加+平均時給の明確な伸び」が確認できれば、ドルの支援材料となり、125円台へ突入すると予想されるが、125円超では円安けん制への警戒も高まりやすく、上値は重くなりそうだ。

雇用統計がかなり悪い結果でない限り、その後についても基本的に9月利上げへの思惑が高まりやすい地合いが続くと考えられ、ドル円は堅調な推移を予想している。

ドル円レートの推移

◆ユーロドルレート

◇7月の動き 月初1.11ドル台前半からスタートし、月末は1.09ドル台後半に。

月初に1.11ドル付近で推移した後、ギリシャ国民投票での緊縮策否決を受けてユーロが売られ、7日には1.09ドル台前半となる。その後はギリシャ協議の合意期待からユーロが買われ、10日には1.11ドル台後半を付ける。

その後、ギリシャ協議は合意したが、市場の目線が欧米の金融政策に向かいユーロは下落基調となり、15日のイエレン議会証言を受けた16日には1.08ドル台へ下落。その後しばらく膠着した展開となったが、ギリシャ議会における改革法案可決などによるユーロ買いもあり、23日には1.10ドルへ上昇。その後は1.10ドルを挟んだ展開となり、月末も1.09ドル台後半で終了した。

◇当面の予想

今月に入り、ドル高圧力が高まり、足元は1.09ドル台前半で推移している。ドル円と同様、当面の最大の焦点は本日の米雇用統計となるが、かなり悪い結果とならない限り、米利上げ観測が高まりやすい状況が続くだろう。

また、そもそもギリシャ問題が一段落したことで、ユーロドルでは米欧金融政策の方向性の違いに再び意識が向かいやすくなってきたとみられ、ユーロドルは弱含みを予想している。

金利・為替予測表

(1)IMFが個人名義で3日に発表した論文では、「現状の国債買入れの限界は17年~18年」とされている。
(2)日銀は2013年4月4日に金融政策の誘導目標を無担保コール翌日物からマネタリーベースへ変更したため、厳密には現在、日本の政策金利という概念は無くなっている。

斉藤 誠
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

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