インバウンド効果を後押しする免税店の増加

こうした訪日外国人旅行者による消費支出(インバウンド消費)は、消費税率を引き上げた14年4月以降、個人消費を中心に内需の低迷が続く日本経済において、一定の下支え効果を発揮している。

百貨店、ドラッグストア、家電量販店におけるインバウンド消費の割合を、入国者や購入者単価・購入率などを用いて試算(*2)すると、いずれの業態においても訪日外国人旅行者の存在感が高まっていることが見て取れる(図3)。

図3 売上高に占める訪日外国人旅行者の割合

例えば、百貨店売上高に占める訪日外国人旅行者の売上高の割合は、2011年の0.2%から14年には2.5%まで上昇している。このほか、家電量販店(11年:1.0%→14年:3.7%)、ドラッグストア(11年:1.0%→14年:3.8%)でも同様の傾向がみられる。このように、インバウンド消費が増加している背景には、前述のとおり訪日外国人旅行者の増加に加え、一人当たりの旅行支出が拡大していることが挙げられる。

「訪日外国人旅行者消費動向調査」(観光庁)によると、訪日外国人旅行者一人当たりの旅行支出は2010年の13.3万円から2014年には15.1万円まで増加し、2014年については前年比10.6%(2013年:同5.3%)と伸びが加速している(図4)。

図4 費目別にみる訪日外国人旅行者一人当たり旅行支出

旅行支出の内訳をみると、消費単価全体の9割を占める買物代、宿泊料金、飲食費が増加を続けるなか、買物代(前年比19.2%)、飲食費(同14.7%)が2014年に急増したことが旅行支出押し上げに寄与している(宿泊料金:前年比▲1.1%)。訪日外国人旅行者の買物代、飲食費が大幅に増加しているのは円安によるところが大きいが、買物代に限っては高額商品の購入率が高まっていることに加え、2014年10月の免税制度拡充(*3)も支出全体を大きく押し上げているとみられる。

買物代の内訳をみてみると、単価の高いカメラ・ビデオカメラ・時計や電気製品が上昇しているほか、免税制度拡充の対象となった化粧品・医薬品・トイレタリーは2014年に上昇に転じている(図5)。

図5 訪日外国人旅行者の買物代

円安による購買力の高まりに加え、消費税免税の対象が拡大したことが、訪日外国人旅行者に対して幅広い商品選択の機会を与えたといえる。

このように、インバウンド消費は個人消費の回復が遅れる中で、一定の下支え効果を発揮している。ただし、こうした効果は百貨店などの免税店が集中する都市部や一部の観光地に限られ、それ以外の地方にまで十分に行き渡っていないとの見方もある。