インバウンド効果は今後地方へ波及
業態別売上高に占めるインバウンド消費の割合を地域別に試算してみると、東北や四国など地方が低い一方で、関東、近畿、北海道では総じて高い傾向がいずれの業態でもみられるように、インバウンド消費は一部の地域に偏っているといえる(図6~8)。
その背景として、観光資源の集中と交通アクセスの容易さが訪日外国人旅行者の増加をもたらしていると共に、都市部では比較的価格帯の高い百貨店や家電量販店などの免税店が集中するため、訪日外国人旅行者数の増加による経済効果がより大きくなると考えられる。
こうした中、免税制度拡充を機にこれまで免税の対象外であった食料、飲料、化粧品などの消耗品が免税の対象となり、免税店の増加は都市部に留まらず地方にも広がりを見せている。
ここ1年間の免税店数の推移をみてみると、14年4月(5,777件)から14年10月(9,361件)にかけて1.6倍に増加した後、免税制度拡充の効果もあり15年4月(18,779件)には14年10月比で2倍まで伸びが拡大している(図9)。
また、免税店数の変化率(14年10月→15年4月)を地域別に比較すると、百貨店や家電量販店などの免税店が集中する東京(1.8倍)や大阪(2.0倍)、外国人集客力の高い北海道などの観光地(1.9倍)に比べ、熊本(4.4倍)や仙台(3.1倍)などこれまでインバウンドの消費の恩恵が少なかった地域で大幅な伸びとなっている(図10)。
このように、免税制度拡充を機に免税店は地方を中心に急増しており、今まで以上に外国人旅行者を受け入れインバウンド消費を取り込む環境が整いつつある。
また、政府が策定した「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」では、観光振興策の一環として訪日外国人旅行者に向けに地方でも免税店を増やすとの方針を示しており、名産品(菓子類、酒など)を扱う免税店が普及・拡大することが見込まれる。
今後、景気回復が遅れる地方において、免税店の普及・拡大を背景に名産品等を中心にインバウンド消費が拡大することが地方経済の活性化に寄与することが期待される。
(*1)日本の旅行者が海外で支出する金額と、海外から日本への旅行者が日本で支出する金額との差。
(*2)業態別の売上高は、訪日外国人消費動向調査の費目別購入率・単価に出入国管理統計の入国者数を掛け合わせて算出。費目については、百貨店...「服(和服意外)・かばん・靴」、家電量販店...「カメラ・ビデオカメラ・時計、電気」、ドラッグストア...「化粧品・医薬品・トイレタリー」を使用。
(*3)免税の対象は家電、バッグ、衣料品などの耐久財に限定されていたが、改正後は食料品、化粧品、医薬品などの消耗品にまで拡大された。
岡圭佑
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
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