Study of Study

今回は前回に引き続き、移住先・留学先としてのニュージーランドという視点から、ニュージーランドの教育事情について、ニュージーランドの高等教育、様々な留学のかたち、ニュージーランドの独特な学校運営スタイルについて、お話させていただきます。

参考:ニュージーランドの教育事情その1〜世界的に見た教育水準とその制度とは?〜


ニュージーランド の高等教育

ニュージーランドにはそれぞれの地域名を冠した8つの国立大学(University)があり、その全てが総合大学として様々な専門教科を学ぶ機会を提供しています。一般的に学士課程は3~4年、修士課程は2年、博士課程は3年の修学課程で構成されています。

またポリテクニック(ポリテク)と呼ばれる主に実務資格の取得を目的とした高等教育機関があり、日本の専門学校と形態は似ているものの、大学組織との明確な境目はなく、学士号から博士号までが取得可能となっています。

学士課程には25歳以上の成人学生も多く在籍しており、働きながら、育児をしながら大学やポリテクに通う学生をパートタイム学生と呼びます。 また、古くから遠隔地(サテライト)教育・通信教育の発達していたニュージーランドでは、通信コースを通じて資格を取得する学生も少なくありません。

と、ここまでご説明すると日本の学歴社会とは少し異なったニュージーランドの教育システムの構図が見えてくるのではないでしょうか。ニュージーランドで、○○大学に入るために猛烈な受験勉強をするというケースは稀です。同じ資格が取れるのであれば国立大学に通ってもポリテクに通っても同じなので近いほうに通うという人もいます。社会に出てからも、出身大学がどこか、大卒か?高卒か?ということよりも自分の専門が何で、そこで何を学んだのか、どのようなスキルを持っているのか、と言うことが問われます。

また、中3~高1に相当する年次で漠然と自分の専攻(メジャー)を選択するので、途中で専攻を変え別の学校に編入し、別のコースを受けるという場合も少なくありません。社会人になってからのキャリアチェンジに関しても、まずは学校に通うことから始めるという人が多いようです。


様々な留学のかたち

前回お伝えした通りニュージーランドでは国が積極的に留学生の受入れを推進しており、学生の希望に沿えるよう様々な留学プログラムが設けられています。例えばラグビー留学・その他のスポーツ留学・音楽留学、未就学児や低学年のお子さんとお母さんの母子留学、または定年退職後にはじめるシニア留学などなど。英語が公用語で、比較的治安もよく、日本と気候が似ていること(日本のような蒸し暑さはありませんが)、先進国の中では物価が安く学費も安価であることが、ニュージーランドが選ばれる理由となっているようです。


国際色豊かな学びの場で長所を伸ばす~学校の自治・自立は20 年前の財政再建から

ここまで2回に渡って世界から見たニュージーランドの教育水準、教育制度概要、初等・中等教育、ガーディアンビザ、高等教育、一般的な学費についてお話してきましたが、ニュージーランドで学ぶ魅力とは結局なんなのでしょうか?ここからは少し私見も入りますが、一つには国際色が本当の意味で豊かなことだと思います。もともとが建国100年に満たない移民の国であり、現在でも移民に門戸を開いているニュージーランドでは、人種も宗教も母国語も異なる子供たちが同じ学校で机を並べて日々勉強しています。

また、ニュージーランドは20年以上前に先進国の中でも異色といわれる教育改革を断行しており、この流れが今日の特色ある教育に繋がっていると思われます。1980年代後半、時のニュージーランド政府は財政難を打開すべくありとあらゆる政府部門の解体・民営化を行い、「教育」にもメスを入れました。具体的には「教育委員会」を廃止し、学校経営のほとんどの権限を各学校に委譲、受け皿としてThe Board of Trustee(学校理事会)の設置を義務づけたのです。学校理事会は生徒の父母で構成されており日本のPTAと似ていますが、その実態は似て非なるものです。ニュージーランドの公立校では校長先生が実務のトップ(マネージャー)、学校理事会(役員は父母で構成)が学校経営のガバナンスを行います。私は教育方面の専門家ではないためこれがどのくらい日本の常識から乖離しているかわからなかったのですが、ニュージーランドのこの独立路線は世界的にも他に例がないらしく、日本の自治体や学校から見学や視察に訪れる教育関係者が少なくないそうです。

さらに詳細にご興味がありましたら併せてご参照ください。

「ゆるゆるで回す『明日の学校』体験記」 http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100205/212615/

個別の学校ごとに自治・運営を行っているニュージーランドの公立校、ある意味で画一的な日本の教育と対極にあると言えるでしょう。もちろん学校ごと格差があり、「和」よりも「個人」を大切にするため、個人差が大きいということがあるそうです。そのために飛び級が頻繁に行われており、逆に苦手な教科では一学年下のクラスに留まることも珍しくないとのこと。一応学習指導要領に順次たものはありますが、個々の学校や先生の裁量が大きいと言えるでしょう。NCEAで全国の学力水準統一を図ってはいますが、ばらつきがあることは否めません。このようなニュージーランド独自のユニークな教育のあり方に賛否両論はあると思いますが、日本以外の教育システムや教育環境について知っていただく一助となれば幸いです。

参考文献

Ministry of Education ( http://www.minedu.govt.ニュージーランド )

UNDP ( http://hdr.undp.org/en/ )

Education New Zealand ( http://www.newzealandeducated.com/jp/ja/ )

ニュージーランドQA ( http://www.ニュージーランドqa.govt.ニュージーランド )

ニュージーランドEDU ( http://www.ニュージーランドedu.co.ニュージーランド )

BY MW: ニュージーランドにある投資銀行のプライベートバンキング部門勤務

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