(写真=PIXTA)
訪日外国人旅行者数の急増などから、ホテルの収益は改善し期待利回りは大きく低下している。建築費高騰の中、着工軒数は停滞してきたが、ここにきて新規計画が増加。当面ホテル不足は続くが、中期的な訪日外国人増加のためさらなる日本の魅力作りが重要だろう。
2015年6月の訪日外国人旅行者数は160万2千人(前年は106万人)で、円安の影響もあり前年同月比+51.8%の大幅増となった(図表1)。
今年は6月までの半年間の累計が914万人に達し、通年で1,800万人の達成がほぼ確実となっている。東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに2,000万人を目指すという政府目標は、当初、かなり高いハードルと考えられたが、すでに手の届く範囲にまで到達した。
訪日外国人の増加に加え、今年は日本人宿泊者の増加もあり、国内のホテル客室稼働率は近年で最も高い状況が続いている(図表2)。
宿泊旅行統計によると、2015年第2四半期の国内宿泊施設における延べ宿泊者数は1億1,847万人泊(前年比+7.0%増、同+772万人泊増)で、このうち日本人は前年比+2.0%(同+197万人泊)の増加、外国人は前年比+49.0%(同+576万人泊)の増加だった。
延べ宿泊者に占める外国人比率は大幅に上昇し、2015年第2四半期は14.8%となった。このうち今年4月の外国人比率は17.0%と高く、特に東京都内宿泊施設の外国人比率は35.5%と、延べ宿泊者数の3人に一人以上が外国人だった。
さらに、都内宿泊施設ごとの外国人比率を見ると、旅館では延べ宿泊者の54.6%、シティホテルで51.0%と過半数を外国人が占め、ビジネスホテルでも27.2%と4人に一人以上が外国人で占められていた。
今年春には、訪日外国人の増加などから、東京では一部ビジネスホテルで一室3万円と通常の3倍の料金が設定されたと話題になった。こうしたアグレッシブな価格設定は、インターネット経由の予約が大半を占め、需給にあわせて客室料金を柔軟に引き上げることが可能になったためだ。需要急増の中で、ビジネスホテルだけでなく高級ホテルでも積極的に客室単価の引き上げを進めつつある。
その結果、STRグローバルによると、1~6月のホテルの平均販売価格は前年同期と比べ都内で+10.7%の上昇、大阪では25%の上昇となった(i)。客室稼働率の上昇に加え、今後も客室単価の上昇が見込めるため、不動産売買市場でのホテルへの評価は急速に高まっている。