(写真=PIXTA)
7月23日の日本経済新聞に「第3の企業年金 創設」という記事が掲載されました。この「第3の企業年金」とはどのようなものなのでしょうか。
これから三回にわたり、これまでにわが国で行われた議論を確認すると共に、その先行事例となったオランダ及びイギリスにおける検討の経緯について整理をしてみたいと思います。まず、第一回目はわが国におけるこれまでの議論の整理と海外の動きを簡単に紹介します。
なぜ「第3」と呼ぶのか
年金の額に関心はあっても、その制度に関心のある人はあまり多くないかもしれません。おそらく大半の人にとって、日本の年金制度は複雑に感じられるのではないでしょうか。制度の全体像は図表1の通りです。いわゆる1階部分の国民年金(基礎年金)、2階部分の厚生年金・共済年金、そして更に上にくる3階部分の企業年金等という構造になります。
記事はこの3階部分のあり方に焦点を当てています。しかし、その内容を見て、これがなぜ「第3」なのか疑問に思った人もいるのではないでしょうか。
記事では、企業年金には確定給付型と確定拠出型の二種類があり、「前者は企業の負担が重く、後者は加入者のリスクが大きい。そこでこの二つの型の特徴を併せ持つ第3の企業年金を創設する」と解説しています。
日本で企業年金と呼ぶものとしては、これまでに税制適格退職年金(1962~2012)、厚生年金基金(1965~)、企業型確定拠出年金(2001~)、確定給付企業年金(2002~)があります。
このうち、現存するものを整理すると、確定給付型の年金制度(=厚生年金基金+確定給付企業年金)と確定拠出型の年金制度(=確定拠出年金【企業型】)に分けることができます。冒頭に紹介した記事に掲載された企業年金は、この二つの年金制度の中間に位置することから、「第3の企業年金」制度と呼んでいるものだと思います。
また、厚生年金基金については、今後、その役割が縮小されて行くことになっています。この厚生年金基金を始めから除いて考えれば、確定給付企業年金と確定拠出年金【企業型】に続く「第3」の仕組みと考えてもあながち間違いではありません。
一般に企業年金の分野ではDB(DefinedBenefit)と呼んでいるものが確定給付企業年金で、DC(DefinedContribution)と呼んでいるものが確定拠出年金【企業型】であることを考えると、こちらの説明の方が分かりやすいかもしれません。
海外ではこのDBとDCの間に位置する「第3」の仕組みをDA(DefinedAmbition)と呼んでいるようです。これは「企業と加入者がリスクを分かち合い、相互に協力してより良い年金の実現に努める」というような意味です。日本でもDAという言葉を使う時代が来るかもしれません。