なぜ「第3」の仕組みが必要なのか

今回紹介されたような「第3」の仕組みについては、これまでも色々な場で議論されて来ました。比較的最近の例としては、6月に閣議決定された「日本再興戦略(改定2015)」の中に企業年金制度に関する提言があります。

具体的には、「企業が企業年金を実施しやすい環境を整備するため、確定給付企業年金制度について、運用リスクを事業主と加入者で柔軟に分け合うことができるようなハイブリッド型の企業年金制度の導入や、将来の景気変動を見越したより柔軟な運営を可能とする措置について検討し、本年中に結論を得る」としています。

これを受けて、会計基準を決める企業会計基準委員会でも確定給付企業年金の制度改善が議論にあがっています。その際の資料にはオランダの集団型DC(CDC:CollectiveDefinedContribution)が参考として紹介されています。

また、H26年には企業年金連絡協議会が「従業員と事業主の間のリスクシェアを更に促進する方向に制度選択肢の多様化を図り、企業年金制度の実施率向上につなげたい」として、「協働運用型DC」や「元本保証付協働型DC」といった制度の創設を提言しています。その資料の中でイギリスの取組としてDAが紹介されています。

厚生労働省の資料によると、企業年金や退職一時金といった退職給付を実施している企業の比率は1997年から2013年の間に大きく減少し、代わりに退職給付を持たない企業の比率が上昇しています(図表2)。

図表2 退職給付導入企業割合の推移

もし、日本再興戦略で述べられているように、運用に伴って発生するリスクの大きさが原因となって、企業年金が衰退しているのであれば由々しき問題です。運用に関するリスクの在り方を整理した結果、「第3の企業年金」が解決策になるのであれば大いに歓迎したいと思います。