世界の課題解決型Health-Techとイノベーターの群像
第5回 医療ドローン商用化の実現に向けて激化する国際間競争

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2015年7月17日、米国バージニア州で、連邦航空局(FAA)の航空許可を受けた、全米初の無人航空機(ドローン)による医薬品配送の実証実験『Let’s Fly Wisely』が行われた。研究主体は、2013年、ドローンの民生利用研究のために創設された『中大西洋航空パートナーシップ(MAAP:Mid-Atlantic Aviation Partnership)』で、バージニア工科大学がメリーランド大学、ラトガース大学と協力して運営している。

最初に、患者20人分の処方箋医薬品が、米国航空宇宙局(NASA)のシーラスSR22軽飛行機で、バージニア州内のテイズウェル郡空港からロンサム・パイン空港まで空輸された。バックアップと安全上の目的からパイロットが搭乗していたが、飛行機自体は遠隔で操縦されている。

次に、処方箋薬が小さな梱包(総重量10ポンド)に詰め替えられ、オーストラリア企業フラーティ(Flirty)社が提供するドローンを利用して、アパラチア山脈のワイズ郡広場にあるリモートエリアメディカル(RAM)診療所の移動テントまで空輸された。



ドローンの実証実験場オーストラリア発のフラーティ社

ドローンを提供したフラーティ社は、2013年10月、オーストラリアの学生向け教科書レンタル企業ズーカル(Zookal)社のCEOであるアーメド・ハイダー氏と、シドニー大学卒業生でソフトウェア企業ビンブラ(Vimbra)社のCEOを務めるマシュー・スウィーニー氏、デザイナー出身で販売・マーケティング分野を歩んできたトム・ベース氏が共同で創設した、スタートアップ企業だ。

フラーティ社は会社立ち上げ直後から、ズーカル社と提携して、シドニー大学の学生向けにドローンを利用した教科書配送の実証実験(重量2キログラム、距離3キロメートルまでの範囲内)を延べ100回以上行った。ユーザーに対しては、GPS機能を活用したスマートフォン対応の専用モバイルアプリケーションを開発・配布している。

オーストラリアでは、民間航空安全局(CASA)のルール上、2キログラム以下の航空機 を有する起業家は、オンライン申請書の提出を完了すればドローンを離陸させることができる。このメリットを生かして、グーグル(Google)も、オーストラリア東北部のクイーンズランド州で、ドローンによる配送の実証実験(Project Wing)を行った実績がある。