ドローン配送の事業化に向けて拡大するグローバル競争

オーストラリアはドローンのイノベーション拠点に適している反面、その市場規模を前提にすると、ドローン配送のビジネス化を推進するのには限界がある。そこで、フラーティ社がドローン配送の商用化に向けた次なる市場として注目したのが、米国だ。

同社は、2014年9月、FAAの認可を受けたドローンのパイロットサイトがあるネバダ大学リノ校との提携を発表した。リノ校は、2014年1月より工学部でドローン専門のプログラムをスタートさせ、2015年秋のオープンに向けて、ネバダ先進自動飛行機イノベーションセンター(NAASIC)の設置準備を行うなど、地域ぐるみで産業化支援を行っている。

このような流れを経て、同じくFAA認可のパイロットサイトがあるバージニア州で、オーストラリアのスタートアップ企業が、医療ドローンの実証実験に参加するに至ったのである。

なお、フラーティ社は、世界最大のビジネス市場である米国と同時に、ドローン振興策に積極的なニュージーランドにも進出している。ニュージーランドでは、政府機関のキャラハンイノベーションが、映画撮影に特化したドローン開発企画コンテスト『C-Prize』を開催するなど、様々な事業化支援策を打ち出している。


医療ドローンのイノベーションに動き出す日本市場

2014年には、日本でも医療ドローンに関して、心脳血管研究所、お茶の水内科、および国際医療福祉専門学校の救急救命学科がスマートフォンアプリケーション『Heart Rescue』を利用した共同研究『Rescue Drone Project』を実施した。


今年7月には、国際医療福祉専門学校一関校が、同千葉校に配備するドローンを利用し、岩手県内で自動体外式除細動器(AED)や医薬品を運搬する救急救命訓練を実施するなど、技術検証に向けた取組が始まっている。だが、実際の現場で本格的に活用するための制度的な仕組みづくりや実用化・商用化に向けた事業モデル構築はこれからであり、海外勢に大きく先行されている。

国土交通省がドローンの飛行ルールを定める航空法改正案を取りまとめ、総務省がドローン撮影映像のインターネット公開ガイドライン案を公表するなど、規制策の整備は着々と進んでいる。今後、医療分野におけるドローンのイノベーション創出推進策がどのように打ち出されるのかが注目される。

笹原英司(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身、千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B・B2C)および健康医療、介護福祉、ライフサイエンス業界のガバナンス・リスク管理関連調査研究・コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所などで、Health-Techスタートアップに対するメンタリング活動を行っている

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