「米国債は世界の市場の中でえり抜きのオアシスとしての地位を固めている」。9月4日、ブルームバーグはそう報じた。今後、米国の利上げが予想される環境ではこの報道に違和感を感じざるを得ない。なぜなら金利の上昇は債券価格の下落によってもたらされるからだ。果たしてこの見立ては正しいのか。


債券価格と金利の関係

多くの投資家は、債券投資は株式投資と比べて安定的に収益を得ることができるというイメージを持っている。債券は償還まで持てば元本が保証され、保有期間中は決まった利子を受け取ることができる。株式投資と比較すると、はるかにリスクは小さいと感じるだろう。

しかし、債券は市場で時価で取引されており、償還前に売買すれば表面利率が債券の利回りと一致するとは限らない。債券の時価は金利と表裏一体の関係にある。金利が上昇し、同じ発行体が従来よりも高い利率の債券を新たに発行したらどうなるだろう。先に発行されていた債券は利回りで劣り、価格が下落することになる。これが債券価格と金利の関係なのである。


各国債の利回り状況

9月7日時点での主要国の長期金利(10年国債利回り)を比較してみよう。まず米国は2.13%、日本は0.36%、ドイツ0.66%、オーストラリア2.66%、ブラジル15.08%となっている。日本と欧州はともに金融緩和の真っ最中であり、当然ながら利回りの低さは際立っている。それに対しオーストラリアとブラジルは米国よりも利回りが高い。

投資家は単に利回りだけで投資先を選択することはない。為替も投資を判断する上で大きな要因となるし、債券の発行元のリスクについては特に慎重に判断せねばならない。したがって、単純にブラジル国債が最も投資家に魅力があるとは断言できない。日本や欧州は金融緩和により債券価格は高く維持される可能性も高いことから利回りは低くなる。