本当に米国債は「えり抜きのオアシス」なのか

ところで、米国の長期金利をもう少し細かく見てみると、面白いことが見えてくる。長期金利は8月24日から8月31日の間に10%を超える急騰を演じている。つまりこの間、米国債は売られたということになる。「えり抜きのオアシス」という甘い言葉と現実の間には大きなギャップがあるようだ。

この不可解な現象の原因は中国と見られている。中国当局は景気減速に対応するため一旦は元の切り下げを行ったが、その後資金流出を食い止めるために元買い・ドル売り介入を行っている。ドル売りの原資となるのは外貨準備として保有してきた米国債と考えられているのだ。

米国債が魅力的であるのは前提として米連邦準備制度理事会(FRB)による計画的で小幅な金利引き上げが予定されているからだ。最大の米国債保有国である中国にとって今回の米国債売りは本意ではなかっただろう。

1997年6月、当時の橋本龍太郎首相はコロンビア大学での講演で「私は何回か日本政府が持っている財務省証券を大幅に売りたいという誘惑に駆られたことがある」と発言した。翌日、ウオール街では米国債ばかりか米国株までもが急落した。

このように考えると、投資家にはオアシスに見えたとしても、市場にはそれを逆手に取る別の投資家が必ずいるものだ。それはオアシスに見えるかも知れないが、実は逃げ水かも知れない。(Zuu Online編集部)