五輪ロゴパクリ騒動に見る「他者をいじめる人間の本能」
中野信子: これはすごく面白いんですが、歴史上、大衆が歴史の表舞台に登場したのが昭和の戦前期くらいです。その時に、何が変わったかというと、新聞が出てきたんです。新聞が出てきたことによって大衆が声を持つようになり歴史を変えてきました。そういう流れがあります。そして今は新聞の変わりに何があるかというと、SNSがあったりするわけです。オリンピックの一連の流れもそうなんですが…
堀江貴文: その点、いじめている意識があるんでしょうね、ネット上には。最近、あのツイートと戦ってるんですよ。「サノケンもういいだろう」って。
中野信子:
人間は不完全にできていて、イジメをやらないと集団が維持できないという性質があるのですね。そんな人間の集団同士が協力しあうのは、非常に困難なことです。これを人工知能が解決できるならそれはすごいと思う。むしろそこは超えてほしい。
けれど、人間が人間のマネをしたシステムを作り続ける限りそれは超えられないです。
堀江貴文:
そこはプライドがあるんですよ。だったら、自分のプライドを下げていくことです。自分のプライドを下げることによって、他人も自分に対してアプローチをしやすくなるということがあると思うんですよ。自分の情けないところを出すことによって、周りの人たちが自分に話しかけやすくなるという性質があります。
これって、1990年代に放送されたアニメ「エヴァンゲリオン」と似ています。このアニメに出てくる「ATフィールド」ってあるじゃないですか。これは自分のプライドなんですよね。それぞれのプライドがぶつかりあってるんですよ、あのアニメって。だから、碇シンジ君がなぜアサインされたかというと、
お父さんが(息子であるシンジ君を)
世界で一番プライドが高い人間だと思ったのでしょうね。だからエヴァンゲリオンのパイロットにしたんだと思います。だからあの話は、よくできているんですよ。
ただ、イジメは自分のプライドを満たす行為だからなくならないのではないでしょうか。自分より下の人間をつくることによって自分のプライドを満たすのです。
そうじゃなくて自分のプライドを下げればいじめたい欲求がなくなるだろうって。サノケンを見ていて最初から可哀想だなって思っているんです。東京オリンピックのロゴは別にパクりじゃないとは思いますが、それ以外のパクリはぶっちゃけどうでもいいわけです。
でも、ネットのひま人にはそれがすごく大事なんです。彼らのプライドはめちゃ高いからです。
中野信子:
「誰かをたたく(批判する)」という快楽が脳に備え付けてあるという発想が必要なんですね。集団を維持しなければならない環境がある場合には、
進化上で
集団を壊す人を排除する必要があったと考えるべきなんです。その進化上あったのが、今だに脳の中にあって、タダのりしているように見える人を排除する時に、非常に大きな快感が生まれるようになっています。
この集団を壊す人がどういう人か規定しようとすると、みんなの努力だったりみんなのちょっとずつの犠牲の上にタダのりしている人となります。そのまま放置するとどうなるかというと、みんながタダのりしようとして関係が壊れてしまい、集団が維持できなくなります。
もしAIに可能性があるとしたら、
誰かをいじめることで快楽を感じるユニットが消える可能性もあるかもしれない。
集団で生きなくてもいい、もしかしたら、都市のインフラは整っているし、機械に頼れば集団で生きなくても生きられる、そういう時代になってきたわけです。そうすると集団で生きる必要がなくなれば、そういう世代が重なっていけば、そうなる可能性もあるかもしれません。 (ZUU online 編集部)
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