(写真=PIXTA)
少子化の影響で大学の学生集めが年々難しくなるなか、大学が入試の方法を多様化させている。最近は受験生の地元志向が高まっており、東京の有名私立、たとえばMARCH(明治・青山・立教・中央・法政)クラスでも、"東京ローカルの大学"という認識になりつつあるほどで、どこも学生集めは困難になっている。
だからといってハードルを下げるだけでなく、少ないながらも「いい学生」を集めようと努力する大学への注目度が高まっている。
「推薦」は早く合格したい学生と確保したい大学のニーズが一致
最近大学がウエートを高めているのが「推薦入試」だ。文部科学省によると、私立大学の推薦入試での入学者数は例年約19万人。これは私立大の入学者の約半数だ。
これは早く合格を決めたい受験生と、学生を囲い込みたい大学の利害が一致した結果といえる。推薦入試である程度受験生を確保していれば、一般入試でシビアに選考でき、高い水準で合否を決めることができる。水増し合格も出さずに済む。
国公立でも後期日程をやめてAO入試を始める大学が増えている。後期日程は定員枠も小さく、見た目の倍率は高くなるが、ふたをあけると受験生がいないというケースも見られる。前期で第一志望校に合格すれば、受験する必要がないからだ。
3日間にわたる2次試験を課す大学も
最近は大学が学生に求めることが、単に学校で学んだことを習得しているかどうかだけではなくなりつつある。最近の入試の傾向を表すキーワードは「思考力」「判断力」「表現力」の3つだ。
これには、2019年度から「高等学校基礎学力テスト(仮称)」が、2020年度からは「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が始まることになっていることが影響している。学力評価テスト(発展レベル)では、習得した「知識・技能」の確認にとどまらず、「知識・技能を活用する力」、つまり総合的な「思考力・表現力」を問う検査になると言われているからだ。
こうした流れを受け、今の保護者世代なら驚くような入試も生まれている。
お茶の水女子大学が2017年度から導入を予定している新型AO入試 (新フンボルト入試)では、文系は「図書館入試」、理系は「実験室入試」と称して、模擬授業やグループ討議・実験など3日間に及ぶ2次試験を行う。
従来型のペーパーテストではなく、大学教員の講義を受け、他の受験生や大学生と協同して学習を深めながら、各自のレポートにまとめ、個人面談で面接官と共に学習のプロセスを振り返ったり、成果を確認したりする。まさに大学での学びを体験するような入試だ。
京都工芸繊維大学で実施されているAO入試(ダビンチ入試)でも、講義や課題提示を受けてのレポート作成や資料読解、グループディスカッション、プレゼンテーションなどのプログラムが入試に取り入れられている。こうした新しいタイプの入試では、「知識の量」を問うのではなく、それをどう活用するかが問われるのだ。