中小企業の節税
(写真=PIXTA)

企業経営者の常なるテーマは、「資金繰り」と「節税」だろう。特に節税は、ちょっとした気づきやコツで資金繰りがラクになるという効果が期待できる。中小企業オーナーが身近にできる節税対策には、どのようなものがあるのだろうか。


未払費用の年度末計上

従業員への給料や事務所家賃、通信費などについては、一般に「サービスが完了した後に支払が発生する」費用項目だ。このようなものについては、決算期にきちんとチェックしよう。ポイントとしては「決算日にサービスなどが完了していること」、つまり「債務が確定していること」である。


出張旅費規程を整備する

営業などのために出張が多い企業の場合、出張の都度、かかったコストを精算するよりも、「出張旅費規程」を作成し、出張手当の制度を整える方が節税となるだろう。出張旅費規定とは、会社での出張旅費の取扱いについて定めた規定である。基本的には、宿泊費や交通費のみならず、食事代や日当なども含むことができる。出張旅費の規定を設けたうえで、これにのっとって出張にかかるコストを支給すれば、支給した金額全額が法人税法上損金計上できる。

また、日当についても、もし旅費規定がなければ「給与」という形になり、消費税計算上除外されてしまうが、旅費とすることができるなら、消費税計算に加味され、消費税コストを押し下げる効果がある。また、従業員としても、所得税が源泉徴収されないからおトクに感じるかもしれない。ただし、メリットが大きい分、注意も必要だ。

・出張手当の金額は常識的な範囲内に設定すること
・出張の記録をその都度きちんと作成すること

このほか、従業員全員に旅費規程を適用することなどについても考慮しておく必要がある。


年度末に決算賞与を出す

もし、決算において利益が出た場合、特別ボーナスとして従業員全員に決算賞与を支給するのもよいだろう。決算賞与は、決算日までに支給していなくともよい。今期決算の状況を試算した結果、予想以上に利益が出そうな状況になったときに活用することができるのだ。従業員のモチベーションのアップも期待できる。ただし、これにもメリットがある分、相応の注意が必要だ。

・決算日までに決算賞与の額をすべての従業員それぞれに通知していること
・決算日から1か月以内にその決算賞与を支給していること
・決算で賞与として未払計上していること

注意点としては、「すべての従業員に対して行うこと」が必要だということだ。また役員に対する賞与は基本的に損金不算入、つまり法人税法上の経費にならないので対象外となる。

通知については書面で通知し、決算日までに通知を受けた旨のサインまたは捺印を各従業員から受けておいた方がいい。支払いについては、銀行振込がのぞましいが、もし現金で支給するならば、各従業員から領収書をもらっておいた方がよいだろう。いずれも税務調査が来た時にしっかりと対応できるようにしておくための備えだ。