事前確定届出給与制度を活用して役員へ賞与を支給
先に、「原則、役員に対する賞与は損金不算入」と述べた。これは、役員が会社の経営権を掌握している立場である以上、賞与も損金算入OKとしてしまうと利益操作につながりかねないという懸念からの制限である(法人税法上の原則として、本来役員報酬は必要経費として認められていない。あくまでも特例として認められているだけである)。
ただし、事前確定届出給与制度を活用することで、役員に対して支給した賞与を損金算入することができる。注意事項は次の通りだ。
・株主総会でこの役員賞与について決議すること
・役員への支給額と支給日を、株主総会決議日から1カ月以内か、決算日から4カ月以内に税務署に届け出なければならない
・決議した支給日に、決議した通りの金額を役員に対して支払うこと
仮に、期中資金繰りが苦しくなったがゆえに、突如役員賞与を支給しない、あるいは減額する、未払い計上する…といった行為は許されない。また、予想以上に利益が出たために決議した以上の金額を賞与として役員に支給するのもいけない。単に、その役員賞与が否認されるだけでなく、当期中の役員報酬も全額損金不算入扱いとなってしまうのだ。
役員についての取扱いは、会社の経営をコントロールすることができるという立場上、税務署も目を光らせている。そのため、厳重な注意が必要だ。
固定資産や棚卸資産でこまめな節税を
製造業や飲食業などにおいては、固定資産や棚卸資産が決算書につきものだ。これを購入時や使用時にマメにチェックすることが、実は節税につながるのである。
通常なら10万円以上20万円未満の固定資産については3分の1ずつ償却、20万円以上の固定資産については原則通りの減価償却となる。しかし、青色申告の届出をしている法人の場合、30万円未満の固定資産ならば、その事業の用に供した会計年度において償却することができる。
固定資産を買うなら中古を
固定資産を一つ購入するのでも、資金がそれだけ出ていってしまうので、経営者としては悩みのタネだろう。「何が何でも新品でなくてはいけない!」という、やむにやまれぬ事情がある以外は、中古品を購入することをオススメする。なぜなら、新品よりも中古品の方が耐用年数が短いからだ。
たとえば、営業車を買う場合、新品だと耐用年数は通常6年となる。しかし、もし新車登録時から6年経過している中古車を買った場合、耐用年数は6年×20%=1.2→2年(小数点以下端数処理)となるのである。
耐用年数が短ければ、その分、減価償却費に算入できる金額も大きくなる。固定資産を買うための資金がすぐに費用にならないことを考えるなら、少しでもメリットの大きい中古品を買うべきだろう。
固定資産や棚卸資産の陳腐化や除却損で節税を
固定資産であっても棚卸資産であっても、使用していたり、在庫したりしている内に、劣化してくるものだ。これを放置せず、陳腐化による評価損償却や増加償却、除却損などを使って費用計上するとよいだろう。些細なことだが、マメに資産を管理していることが、節税につながるのだ。
このほか、生命保険を活用した節税や資産管理会社を設立することでの節税策などもある。節税ひとつで資金に余裕ができるので、税金に関する勉強は経営者にとっては必須だと言える。
ただし、過度な節税に走ると、資金が流出する結果に終わったり、本業が疎かになったりする場合もある。節税を考える場合には、まずは本業を主体に考え、本業をより順調に、より安定させるためには、どの方法がベストかを考えるとよいだろう。
鈴木 まゆ子(すずき まゆこ)税理士
鈴木まゆ子事務所代表。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。ドン・キホーテ勤務中に会計に興味を持ち会計事務所に転職。妊娠・出産・育児をしながら税理士試験の受験勉強を続け09年に合格。12年に税理士登録。現在、外国人のビザ業務を行う行政書士の夫とともに外国人の決算・申告・コンサルティングに従事。14年から国際相続などを中心に解説記事作成業務を行っている。
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