代替シナリオ
◆楽観シナリオ
楽観シナリオでは、メインシナリオに比べ世界経済が順調に回復する。中国はメインシナリオに比べ成長率が高いことに加え、内需主導の経済成長へと転換していくため、グローバルな不均衡も解消に向かう。
日本の実質GDPは2015、2016年度と潜在成長率を大きく上回る伸びとなり、消費税率が引き上げられる2017年度もプラス成長を確保する。さらに、日銀の異次元緩和の効果から予想インフレ率が上昇することも加わり、消費者物価上昇率は現時点の日銀の見通しどおり、2016年度前半には2%程度となり、その後も安定的に2%程度の伸びを維持する。なお、消費税率引き上げの前提はメインシナリオと同じとしている。
◆悲観シナリオ
悲観シナリオは、中国経済が2017年にかけて3%成長へとハードランディングし、アジア新興国の景気悪化、世界経済の減速につながるケースである。
悲観シナリオにおける今後10年間の平均成長率は中国経済の影響が比較的小さい米国は1.8%となるが、ユーロ圏(0.6%)、日本(0.6%)はゼロ%台の低い伸びにとどまる。日本では2017年度の消費税率引き上げは実施されるが、景気低迷、デフレ基調が継続することからその後は消費税率が据え置かれることを想定した。
◆シナリオ別の財政収支見通し
メインシナリオの財政収支見通しでは2020年度までに基礎的財政収支を黒字化するという政府目標は達成されないとしている。
楽観シナリオでも2020年度の政府目標は達成されないが、名目GDP成長率が今後10年間の平均で2.7%と政府の経済再生ケースに近いものとなるため、2020年度の赤字幅は▲0.6%(GDP比)まで縮小し、消費税率が14%に引き上げられる2024年度には基礎的財政収支の黒字化が実現する。ただし、利払い(ネット)を含む財政収支は予測期間末でも赤字で、メインシナリオに比べて金利の上昇スピードが速いため、基礎的財政収支と財政収支の差はメインシナリオよりも大きくなる。
国・地方の債務残高のGDP比を低下させるためには、基礎的財政収支の黒字幅をさらに拡大させることが必要となる。悲観シナリオでは名目成長率の低迷に伴う税収の伸び悩みが続くことに加え、消費税率が10%で据え置かれることから基礎的財政収支の赤字は拡大傾向が続く。この場合には財政破綻のリスクが高くなるだろう。